2011/5/8追記:

4/45/6の計測値を含めた計算を行って、以下の推定について再検討を行っています。

こちらをご覧ください。

 ↓

放射線量変化モデルによる、積算放射線被曝量と今後の放射線量の推定

 

2011/4/4

岡山大学大学院保健学研究科 助教 北脇知己

放射線量変化モデルによる、積算放射線被曝量の推定と放射線源の推定

要旨:

複数の核種に対応させるように拡張した数理モデルを用いた解析から、今後の空間放射線線量率を予想し、

 3/13から100日間の積算放射線被曝量を推定し、放射線源量の推定を行った。

前回の計算と比べて、ベースラインの放射線量が考慮できており、放射線量の推定半減期が長くなった。

放射線量の半減期が長くなった影響により、短期的には前回計算値の1.8倍程度に100日間の総放射線量が増えている

Cs137由来と考えられるベースラインの放射線量が残るため、長期的には大きな影響が残ると考えられる。

 

1:数理モデル

 これまでの報告から、半減期の違う複数の放射性物質が複合した放射線量を仮定したモデルに拡張する。

(1)          基礎方程式

・単一核種の微分方程式(これまでのモデル)

··························· (1)

E(t):放射線量

f(t) :放射性物質 発生関数(appearance function

B :ベースライン放射線変化量

kd :減衰係数

・モデル関数

················· (2)

T:放射性物質平均飛来時間

K:放射性物質飛来のばらつき

b=B/kd :ベースライン放射線量

・モデル拡張

上記のモデルを複数の核種に対応させるように数理モデルを拡張する。

下図に示すように、一度に複数の核種からなる放射性物質が飛来したと考えると、それぞれの放射性物質は核種固有の半減期で崩壊していく。

このため、総放射線量は、これらの放射性物質を放射線源とする放射線量の和で表現できると考えられる。

よって、拡張した数理モデルとして、総放射線量を次の式のように表現する。

··········· (3)

解析を簡単にするため、3つの半減期(短半減期(2.43日)、中半減期(8日)、長半減期(30年))を固定して用いる。

想定している核種は    中半減期がI131、長半減期がCs137である。

(短半減期については、複数の短半減期核種の総和と考えている。)

 

2−1:積算放射線被曝量の推定

(1)  福島県での環境放射線量測定値

 http://www.pref.fukushima.jp/j/ から、福島、飯舘の2カ所を対象とする。

・拡張した解析モデルの解説

 福島市のデータを解析すると下図のようになる。

これまでの解析では、短半減期と中半減期を合わせて一つの半減期として解析していたため、

全体の半減期としてI131の半減期(8)よりも小さな半減期と推定してしまっていた。

また、ベースラインの影響を考慮していなかったため、Cs137のような長半減期を持つ核種の影響が考慮できていなかった。

3/15の推定飛来時期から300時間以上が経過し、こうした短半減期の寄与が相対的に少なくなったため、

現在では、ほぼ中半減期の影響と長半減期の影響が残っていると思われる。

このため現在では、ほぼ放射線量の減衰は中半減期での減少を見せており、

ほとんど変化しない成分が長半減期の核種による影響と考えられる。

・対数軸で表現した解析モデル

図に示すように福島、飯舘の2カ所では、福島の計測データの一致度が高い。

また飯舘での計測データについては、測定場所が変化したため、やや誤差が大きいと考えられる。

対数グラフ上では、徐々に傾きが変化してきており、全体の半減期の変化が読み取れる。

・線形軸で表現した解析モデル

図に今後の予想放射線量の変化を示す。

以前のグラフに比べて、放射線量の半減期とベースラインの放射線量が違っている。

短期的には放射線量の半減期の影響により、100日間の総放射線量は増えている。(前回計算値の1.8倍程度

福島で5.8mSv、飯舘で13.05mSvという量は福島でCT検査一回分、飯舘でCT検査2回分の放射線被曝量程度である。

むしろベースラインの放射線量(Cs137由来)が残るため、長期的には、この影響が大きいと考えられる

飯舘を例にとると、3.07μSv/h × 24時間 × 365 26.9mSv/ の被曝が予想される。

福島の場合は、  1.32μSv/h × 24時間 × 365 11.5mSv/ の被曝が予想される。

100日程度の短期的な影響よりも、年間でほぼ2倍の被曝量となるため、長期的な影響を考慮する必要がある。

 

(2)  宮城県

http://www.pref.miyagi.jp/gentai/Press/PressH230315.html から、大河原、亘理の2カ所で同様の解析を行う。

 ・対数軸で表現した解析モデル

 図に示すように大河原、亘理の2カ所では、短期的な影響は収束に向かっており、長期的な影響(長半減期による放射線量)が主要な寄与成分となっている。

・線形軸で表現した解析モデル

福島・飯舘のデータと同様に今後の予想放射線量の変化を示す。

以前の結果に比べて、放射線量の半減期とベースラインの放射線量が違っている。

短期的には放射線量の半減期の影響により、100日間の総放射線量は増えている。(前回計算値の1.6倍程度

それでもこれら2カ所の積算放射線被曝量は、多くても700μSv以下であり胃の検診一回分の放射線被曝量程度である。

むしろ、ここでもベースラインの放射線量(Cs137由来と考えられる)が残るため、長期的にこの影響が大きいと考えられる

 大河原では 0.138 μSv/h × 24時間 × 365 1.207 mSv/年の被曝が予想される。

 亘理では、 0.109 μSv/h × 24時間 × 365 0.955 mSv/年の被曝が予想される。

 

(3)  福島県浪江町付近のモニタリングカーによる空間線量率の測定結果

http://www.mext.go.jp/a_menu/saigaijohou/syousai/1304001.htm

から、浪江町付近で高い空間線量率が計測された3132、の2カ所を対象とする。

・対数軸で表現した解析モデル

 図に示すように3132、の2カ所では、短期的な影響は収束に向かっているもののまだ残っており、

 今後長期的な影響(長半減期による放射線量)が主要な寄与成分となってくると思われる。

・線形軸で表現した解析モデル