岡山大学文学部人文学科哲学芸術学専修コース

2010年1月31日更新


 どの時代も変化のなかにあったことは確かです。しかし、私たちはいまかつてなかった変化のスピードのなかで生きています。たとえばテクノロジーの加速度的な進歩は、私たちの生活を日毎に変えつつあるといっても過言ではありません。家庭におかれたコンピューターは、世界中のあらゆる情報と結ばれています。選択の余地もほとんどないまま、情報の波が押し寄せてきます。ネット・サーフィンに興じているつもりが、サーフ・ボードもろとも、その情報の怒濤のなかに飲み込まれてしまわないとも限りません。私たちの生活の急激な変化は、また新たな危険をもたらしつつあります。人間関係、経済、国家、国際関係の大きな変動のなかで、私たちが身につけてきた「常識」はもはや有効性を失いつつあるようです。実際、ここ数年、「常識」を越えた、想像を絶する事件が次々と起こっています。いま、「常識」をもってしては、理解することも、対処することも不可能な事態が生じています。そうしたなかで、人間とは何かという根本的な問いを深く掘り下げて考察することが、この時代を生きる者一人一人の切実な課題となりつつあるのです。

 人間の長い歴史のなかで、哲学・思想・倫理・宗教、そして芸術において、人間のあり方が深く探求されてきました。人間をめぐる真摯な問いかけが、もちろんその最終的な解答を得たわけではありません。ある一つの答えは、さらに別の謎を明るみにだし、新たな問いかけを導き出すのです。私たちの哲学芸術学専修コースは、こうした人間探求の歴史に学びながら、人間への考察をさらに深めることを目指しています。私たちのコースは、人間についての個別的な経験的諸科学の既成の枠組みにとらわれることなく、人間を探求しようとします。人間の営みの総合的意味を探る基礎的なコースというところに、私たちのコースの固有の使命があります。この時代に課せられた課題を専門的に研究するのが哲学芸術学専修コースであると言うこともできるでしょう。

 哲学芸術学専修コースでは、おおまかに次の2つの領域に分かれています。

 (1)哲学領域(大学院:哲学・思想文化論講座)
 (2)芸術領域(大学院:表象文化論講座)

私たち哲学芸術学専修コースの教員としては、本格的に自らの問題意識を深め積極的に学ぼうとする方々を迎えたいと望んでいます。