蘇生時咽頭冷却の有用性の検討
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1.臨床研究課題名

蘇生時咽頭冷却の有用性の検討

2.組織

1)研究代表者
 岡山大学病院麻酔科蘇生科
  森田 潔
2)事務局
 岡山大学病院麻酔科蘇生科
  武田 吉正,白石 建輔,佐々木 俊弘,片山 浩,森田 潔
3)研究実施責任者(プロトコル作成,研究運営)
 山口大学医学部医学部附属病院 高度救命救急センター
  前川 剛志,笠岡 俊志,鶴田 良介
 岡山大学病院 麻酔科蘇生科
  武田 吉正,片山 浩,森田 潔
 岡山大学病院 救急部
  長野 修,氏家 良人
 津山中央病院 救命救急センター
  森本 直樹,萩岡 信吾,内藤 宏道
 香川大学医学部附属病院 救命・救急センター
  黒田 泰弘
 徳島大学医学部附属病院 救急集中治療部
  西村 匡司
 川崎医科大学附属病院  高度救命救急センター
  鈴木 幸一郎
 広島大学病院 高度救命救急センター
  谷川 攻一,廣橋 伸之
 愛媛大学医学部附属病院 救急部
  相引 眞幸
4)外部効果安全性評価委員
 鳥取大学医学部 麻酔・集中治療医学分野
  稲垣 喜三
 岐阜大学大学院医学系研究科 麻酔・疼痛制御学分野
  土肥 修司
5)統計解析
 山口大学医学部医学部保健学科 病態検査学講座
  市原 清志
6)機材製造
 大研医器株式会社
  小林 武治,橋本 裕志,國部 雅誠,原 祐介
7)プロトコル監査
 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 疫学・衛生学分野
  頼藤 貴志
8)研究実施者
 さいたま赤十字病院 救命救急センター
  清田 和也
 神戸大学医学部附属病院 救急部
  川嶋 隆久
 大阪府立急性期・総合医療センター 救命救急センター
  藤見 聡
 済生会福岡総合病院 救命救急センター
  岸川 正信,林田 和之
 千葉大学医学部附属病院 救急部・集中治療部
  篠崎 広一郎
 北九州総合病院 救命救急センター
  恩田 純,稲田 耕三
 大阪府三島救命救急センター
  小畑 仁司,筈井 寛
 帝京大学医学部附属病院 救命救急センター
  坂本 哲也,土井 智喜
 熊本赤十字病院 救命救急センター
  井 清司,高村 政志,岡野 雄一
 医誠会病院 救命医療センター
  丸川 征四郎
 東京医科大学八王子医療センター 救命救急センター
  横山 智仁,田口 博一
 津山中央病院 救命救急センター
  森本 直樹,萩岡 信吾,内藤 宏道
 熊本医療センター 救命救急・集中治療部
  高橋 毅

3.背景

 自動体外式除細動器(AED)の急速な普及にみられるように,心因性突然死に対する治療設備の充実や治療方法の開発に国民の関心は高く厚生労働行政の重要な課題である.心停止蘇生後の脳保護に脳低温療法が有効であることは無作為化比較試験(RCT)で報告され,多くの施設で施行されている.
 心停止蘇生後の神経細胞は「分」のオーダーでグルタミン酸により障害を受け,「時」のオーダーで炎症により障害を受け,「日」のオーダーでアポトーシスにより障害を受ける.現在の脳低温療法は,全身冷却に時間を要するため,「時」〜「日」のオーダーで治療効果を発揮している.現在の脳低温療法に加え,「分」のオーダーで脳温を低下させることができれば,脳低温療法の有効性をさらに高めることが可能である.蘇生と同時に脳を急速かつ選択的に冷却する方法の開発が求められている.

4.目的

 咽頭の1cm外側に総頸動脈が存在し,更にその外側に内頸静脈や外頸静脈が存在する.咽頭を冷却すると,総頸動脈が冷却され脳温が選択的に低下する.本研究では,心停止蘇生時に咽頭冷却を施行する.蘇生時に咽頭冷却を施行しなかった群を対象として,鼓膜温の変化をPrimary endpoint,神経学的予後,生命予後をSecondary endpointとして 咽頭冷却の有効性を検討する.

5.対象

院内院外を問わず,心停止状態で,もしくは蘇生直後に搬送された患者.
原則として心拍再開前より咽頭冷却を施行するが,心拍が再開している患者も再開後15分以内であれば対象に含める.
<Inclusion Criteria>
目撃のある心原性・非心原性心停止(外傷性心停止は除く)
年齢:16歳以上ー89歳以下
心停止から医療従事者(救急隊員を含む)による蘇生開始までが15分以内
患者の身元がわかっていること(代諾者の来院が予想されること)
<Exclusion Criteria>
咽頭,食道に障害がある場合
来院時深部温34.0℃以下
妊婦
免疫不全,もしくは免疫抑制剤(ステロイドを除く)を投与されていることが判明した場合
心停止以外に意識障害を起こしうる脳障害が存在する場合
代諾者が本研究への参加を拒否した場合(データは解析の対象に含まれませんが,研究対象者数には含まれます.)
発症前ADLが低い場合
(別紙9.Barthel index合計65点以下)

6.同意取得

 各施設は倫理委員会(IRB)および施設長の承認を得た後に,研究を開始する.同意取得時、両群の代諾者に以下の情報を提供する。
1 ラットによる研究で咽頭冷却により虚血性脳組織障害の改善が認められている。
2 サルによる研究で4℃/30分の脳温低下を観察している。
3 ヒトによる蘇生後咽頭冷却の研究で0.7℃/30分の鼓膜温低下を観察している。
本研究は代諾者から事前に同意を得ることが困難な,緊急状況下で行われる救命的研究のため,代諾者がいなければ,試験開始後に同意を得る(GCP第7条、第75条).咽頭冷却群で代諾者がいた場合は,承諾後に咽頭冷却を開始する.代諾者から同意を得た時間を記載する.代諾者に試験の内容,被験者の権利などを十分に説明し,代諾者が内容を理解したことを確認の上で,本試験への参加について代諾者自の自由意志による同意を文書で得るものとする.説明時はいかなる場合であっても,被験者の人権を最優先し,代諾者の同意が自発的に行われるように十分注意する.代諾者の同意がなかった場合は,研究対象より除外し,咽頭冷却を施行中であれば中止する.
本研究はGCP第7条および第75条で定められた,以下の5項目を満たす.
1 咽頭冷却装置は,心停止患者に対して,その生命・神経学的予後悪化を回避するため緊急に使用される医療機器であり,製造承認申請が予定されている.
2 現在の全身冷却による脳低温療法は,蘇生後に時間を経過して行われるため,超急性期の脳保護効果が相殺されやすい.
3 咽頭冷却により,被験者の脳障害が軽減され,生命危機の回避可能性が増加する.
4 外部効果安全性評価委員会を設置している.
5 本研究プロトコルは現行の治療にいかなる制限も加えていない.また,動物実験や臨床研究で咽頭の低温障害を認めていない.被験者に対する不利益は必要な最小限度のものであると考えられる.

7.無作為割り付け及びエントリー方法

無作為割付は中央への電話により行う.治療開始前に電話し,open-labelでの検討とする.電話によりエントリーとみなす.

8.臨床研究デザイン

多施設,無作為化比較試験(RCT)とする.
コントロール群症例数:咽頭冷却群症例数 = 1:1

9.治療

蘇生法はAHAガイドライン2005に準拠する
心拍再開後にシバリングが発生した場合,必要に応じ鎮静薬,麻薬,筋弛緩薬の使用を考慮する.以下の用法・用量を目安に薬剤投与を行う.
鎮静薬:ミダゾラム0.2mg/kg/hr(初回投与量0.1-0.2mg/kg)
麻薬:フェンタニル2μg/kg/hr(初回投与量2μg/kg)
筋弛緩薬:ベクロニウム0.06mg/kg/hr(初回投与量0.1mg/kg)
     もしくは
     ロクロニウム0.4mg/kg/hr(初回投与量0.9mg/kg)
咽頭冷却は救急外来等で開始する
無作為に次の2群に振り分ける
I群:咽頭冷却群
C群:コントロール群
【I群】
気管挿管直後に咽頭冷却カフを挿入し,咽頭冷却を開始する.
その他は,当該施設が従来行っている治療法を行う.
<施行法>
 咽頭冷却
 潅流速度:500mL/分 以上
 潅流圧50±20 cmH2O
 潅流液:生理食塩水(5℃)
 目標鼓膜温:32±1℃
 冷却時間:2時間
<終了条件>
 心拍再開せず,蘇生行為を中止したとき
 咽頭冷却の施行時間が,2時間を超えたとき
【C群】
当該施設が従来行っている治療法を行う.

10.併用可能薬及び併用可能治療法

他の臨床試験,試験的療法の併用は原則として不可.併用した場合は,その内容を記載する.

11.測定項目

a.深部温(膀胱温もしくは直腸温を蘇生開始より72時間記録)
b.鼓膜温(蘇生開始より72時間記録)
c.血液(第1,3,7病日に測定:WBC, CRP, BS,第1病日に測定HbA1c)
d.グラスゴー・コーマ・スケール(別紙10)(蘇生時,蘇生2週間後)蘇生2週間後の判定は治療群をブラインドした観察者により行う
e.グラスゴー・ピッツバーグ脳機能カテゴリー(別紙11)(蘇生1.6ヶ月)判定は治療群をブラインドした観察者により行う

12.記載項目(記録用紙を別紙1〜8に示す)

基礎データ:年齢,性別,身長,体重
心肺蘇生データ:心停止時刻,バイスタンダーによる蘇生開始時刻,救急隊による蘇生開始時刻,救急外来到着時刻,誤嚥の有無,心拍再開の成否,心臓マッサージ終了時刻,自己心拍が回復した時刻,心拍再開に要したエピネフリン量,心拍再開に要したピトレシン量,DCショック回数,蘇生時の心電図波形(初期調律),総輸液量,輸液温度
冷却データ:咽頭冷却カフ挿入時刻,咽頭冷却開始時刻,咽頭冷却終了時刻,全身冷却開始時刻,全身冷却の復温開始時刻,復温終了時刻,咽頭冷却に起因する外傷や咽頭の低温障害の有無,咽頭冷却以外の冷却や脳保護法施行の有無
感染データ:SIRS発生の有無,ALI発生の有無(別紙12),ステロイド使用の有無,集中治療室在室期間,入院期間

13.End point

Intention-to-treatによる解析を行う.
(1)冷却効果(Primary endpoint)
 【比較項目】咽頭冷却開始後2時間以内の鼓膜温と中枢温の最低温度
(2)機能予後(Secondary endpoint)
 A)意識レベル評価
 【比較項目】蘇生2週間後のグラスゴー・コーマ・スケール
 B)神経機能評価
 【比較項目】蘇生1,6月後のグラスゴー・ピッツバーグ脳機能カテゴリー
(3)生命予後(Secondary endpoint)
 A)心拍再開(return of spontaneous circulation, ROSC),心拍再開とは触知できる脈拍の回復を指す
 【比較項目】心拍再開時間,心拍再開率
 B)死亡率
 【比較項目】蘇生後1,3,6ヶ月間の死亡率
(4) 蘇生開始後3日間の合併症発生率(Secondary endpoint)
 【比較項目】ALI,SIRS,敗血症,透析,PCPS,血小板減少,凝固異常,不整脈
(5)サブグループ解析(Secondary endpoint)
 【比較項目】咽頭冷却時間等プロトコルを遵守したas-treated analysisによる,冷却効果,機能予後評価,生命予後評価
(6)サブグループ解析(Secondary endpoint)
 【比較項目】6時間,24時間生存した患者を母集団とする機能予後評価,生命予後評価
(7)サブグループ解析(Secondary endpoint)
 【比較項目】PCPSもしくは冷輸液静注を行わなかった患者を母集団とする,冷却効果,機能予後評価,生命予後評価
(8)サブグループ解析(Secondary endpoint)
 【比較項目】生存者を母集団とする,集中治療室在室期間,入院期間

14.有害事象に関する取り扱い

重篤な有害事象の定義
 概ね1ヶ月以内に被験者に当該傷病(心停止)に起因する事象以外に新たに発現,あるいは増悪した徴候,症状,病気または臨床検査値異常変動などで臨床上好ましくないもののうち,以下のものをいう.
 a.死に至るもの(死亡)
 b.生命を脅かすもの(死亡につながる恐れのあるもの)
 c.治療のため入院期間が著明に延長するもの
 d.永続的な顕著な障害・機能不全に陥るもの(障害)
重篤な有害事象が発生した場合,研究実施者は本臨床研究における手技との因果関係に関わらず,速やかに処置を講じ,被験者の安全確保を行う.被験者を鑑別し得る情報,事象名,発現日,重篤性,処置などについて事務局へ直ちに連絡する.研究実施者は,当該有害事象が効果安全性評価委員会への緊急報告の対象となると判断した場合,直ちにこれを報告する.事務局は必要に応じて他の実施医療機関と各研究者へ,その詳細および注意事項を連絡するとともに,研究継続の可否と研究実施計画書の変更の要否を判断し,必要な処置を講じる.研究実施者は伝えるべきと判断した副作用などについて代諾者へ情報を提供し,代諾者が研究に継続して参加する意思があるかどうかを確認する.

15.被験者のプライバシー保護

 被験者のプライバシーの保護については十分配慮する.データシート作成など被験者を特定する場合には,氏名を被験者識別コードに変更し匿名連結化する.被験者識別コードには,施設名,施設症例番号を用いる.連結表(被験者識別コードと患者個人を識別),同意書,データシート等,被験者のプライバシーやデータの信頼性に関わる書類は各施設で施錠保管し,研究発表5年後に裁断処理する.なお,作成されたデータシートは本試験の目的以外には使用しない.また,本試験により知り得た情報は一切,第三者に漏洩しない.

16.試験の中止及び脱落

 下記の基準に該当する出来事が発生した場合,本試験を中止し,理由をデータシートに記載する.なお,有害事象の発現など安全性に問題が生じた場合,担当医師は速やかに適切な処置を行い,被験者の安全性が確認されるまで,追跡調査を行う.
 a.代諾者から中止の申し出があったとき(解析の対象から除外)
 b.死亡したとき(解析の対象からは除外しない)
 c.重篤な有害事象の発現,合併症の悪化などにより試験の継続が困難と判断されたとき(解析の対象からは除外しない)
 d.登録後に対象として不的確であることが判明したとき(解析の対象から除外)
 e.重大な研究計画書違反が明らかとなったとき(解析の対象から除外)

17.目標とする被験者数と研究予定期間

 本研究は,鼓膜温の変化をPrimary endpoint,神経学的予後,生命予後をSecondary endpointとして蘇生時咽頭冷却の有効性検討を目的としている.コントロール群の鼓膜温の標準偏差を3℃,咽頭冷却群との温度差を1℃と仮定する.第1種,第2種過誤率をそれぞれ0.05, 0.2とおき,約10%の脱落例を考慮すると,必要症例総数は約300症例と算定される.
 コントロール群の24時間生存率を28.5%,1ヶ月生存率を6.1%と推定し,咽頭冷却群の24時間生存率を28.5%,1ヶ月生存率を9.3%(改善率53%)と仮定する.第1種,第2種過誤率をそれぞれ0.05, 0.2とおき,約10%の脱落例を考慮すると,必要症例総数は約440症例と算定される.24時間生存率を28.5%と推定しているので,1500症例のCPR症例が必要と算定される.
 以上より目標とする被験者数は,第一目標300症例,第二目標1500症例
研究予定期間:平成21年4月より平成22年3月.
中間集計:平成21年9月15日

18.データ集計

 配布されたデータシート(エクセル・ファイル)に記載事項を記録する.データシートファイルは1患者に1ファイルとする.入力したファイルは,電子メールで事務局宛(cool@cc.okayama-u.ac.jp)に送付する.データシートのファイル名は任意でよい.DAY4にデータシートをメールで送信する.

19.費用負担

本研究に必要な研究費(備品費,消耗品費,人件費,旅費等)は,原則として厚生労働科学研究費補助金により賄う.

20.健康被害補償

本研究で被験者に何らかの健康被害が生じた場合,必要かつ適切な処置を行うとともに,事務局に報告する.医師の過失に起因する被害については,当該医師もしくは病院が加入する責任賠償保険を適応する.咽頭冷却システムの欠陥に起因する被害については,大研医器株式会社が加入する賠償保険(PL保険)を適応する

21.倫理

本研究はヘルシンキ宣言(1997年南アフリカ改訂版)の精神を遵守し,かつ本臨床研究実施計画書,薬事法14条3項および第80条の2に規定する基準および「医薬品の臨床試験の基準(GCP)に関する省令」(厚生労働省令 第28号)を遵守し実施する.

22.研究計画書の改訂

研究実施責任者と外部効果安全性評価委員による研究運営会議(メールによる会議を含む)で,研究実施責任者の過半数および効果安全性評価委員全員の同意を経て,研究計画書の改訂を行うことができる.研究計画書の改訂を行った場合,各施設は倫理委員会(IRB)および施設長の承認を得る.

23.研究全体の中止

 効果安全性評価委員会から勧告を受けた場合,その他,研究の続行に関して重大な支障が生じたとの動議が提出された場合,研究運営会議を開催する.討議の結果により,研究代表者は研究全体を中止することができる.

24.研究結果の発表

各施設が行った研究成果を,各施設が個別に発表することを妨げない.

25.タイムスケジュール

2008年7月3日第1回研究運営会議(岐阜),プロトコル作成
2008年10月14日第2回研究運営会議(札幌),
2008年12月10日予算申請
2008年1月25日第3回研究運営会議,第1回研究全体会議,IRB申請開始
2009年3月31日IRB通過,予算内定
2009年6月1日エントリー開始
2010年3月6日(集中治療医学会終了後)第2回研究全体会議(広島)
2010年3月エントリー終了
2010年3月厚生労働省報告
2011年3月データ収集終了

26.事務局

〒700ー8558 岡山市鹿田町2ー5ー1
岡山大学医学部歯学部附属病院麻酔科蘇生科
武田吉正
Tel 086ー235ー7778
Fax 086ー235ー6984
Email cool@cc.okayama-u.ac.jp

Ver.3.14 2009年9月30日 改訂

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