高校生・受験生の皆さんへ

私とフランス語との出会い

 中学校に入ったとき、英語を教えてくれたのは女の先生でした。たぶん留学経験がおありだったのでしょう、すごく発音が綺麗でした。その先生のおかげで、生まれて初めて学ぶ外国語が大好きになり、ラジオ講座を聴いたり、英検にチャレンジしたりしていました。
 ところが高校になると、進学校でしたから英語の授業はいわゆる「受験英語」でした。英単語や熟語を機械的に暗記させられたり、無味乾燥な文法の授業であったりと、すっかり英語が嫌いになってしまいました。
 さて、大学に入学して、一般教養として英語とは別の外国語も学ぶことになりました。英語に対するアレルギーが残っており、中国語を選択することもできましたが、やはり、ヨーロッパの言葉に対する憧れがありました。ドイツ語かフランス語か悩んだあげく、結局フランス語を取ることになりました。
 前期週2コマの授業でひととおり基礎文法を学び、後期は講読の授業になりました。その中で取り上げられたのがアンヌ・フィリップの『ためいきのとき』です。
 若くして亡くなった往年の二枚目俳優ジェラール・フィリップの妻アンヌが、夫との出会いと別れを回想して綴ったものです。その簡潔で美しい文章と、彼らの愛の物語に深い感銘を受けました。
 ・・・・・これが私とフランス語との幸福な出会いです。
 文学部入学当初は哲学か倫理学をやりたいと漠然と考えていたのですが、結局フランス語フランス文学を専攻することになりました。

語学は相性

 外国語にはそれぞれ特性があります。例えばフランス語は分析的であるのに対して、ドイツ語は総合的であるなどといわれます。人間付き合いには相性があるように、語学にも相性があると思います。岡山大学では一般教養の外国語科目として、英語はもちろんのこと、ドイツ語、フランス語、イタリア語、スペイン語、ロシア語、中国語、朝鮮語の中から自由に選んで学ぶことができます。皆さんにも語学との幸福な出会いがあるといいですね。

文学部での授業

 私が担当している授業を一部ご紹介します。専門科目の「フランス言語文化概説」では、外来語として日本語になったフランス語からフランス文学まで、フランスの社会を背景にした言語と文化について概観します。具体的には、フランス人の生活、宗教(キリスト教)、料理のメニュー、映画、オペラ、シャンソン、詩、小説、演劇、ことわざ、などについてお話しています。
 副専攻コースの「フランス語コミュニケーション1・2」では、ネイティヴのCD教材を使用して、カフェ、レストラン、メトロ、ホテル、ブティックなどでの実用的な会話の練習をしています。

高校生のためのフランス語入門講座

 サッカーワールドカップ2006決勝で、フランス代表チーム主将ジダン選手の行為が話題になりました。頭突きをフランス語で「クゥ・ドゥ・テット」といいます。「クゥ」は「一撃」、「ドゥ」は「の」、「テット」は「頭」を表します。英語のofに当たるdeを用いて単語と単語をつなげているわけです。フランス語が分析的だといわれるゆえんです。ちなみに、「クゥ・ドゥ・テット」は「軽はずみ」「軽率な決定」と意味が派生していきますが、家族の名誉を守ろうとしたジダンにそれを当てはめるのは酷でしょうね(芝紘子『地中海世界の<名誉>観念』(岩波書店、2010年)参照)。ところで、「クーデター」という言葉をご存じですか。「政変」を表すフランス語で、直訳すると「国家の一撃(打撃・衝撃)」となります。最後にもうひとつ。「稲妻」を表す「クゥ・ドゥ・フゥドル」は「一目惚れ」の意味にもなります。皆さんはそういう経験をしたことがありますか?