プロジェクト

世界初の3次元デジタル脳図譜を用いた
安全・正確な脳外科手術の実現

脳深部刺激療法とは,脳神経回路の一部を電気刺激する治療法で,パーキンソン病やジストニアなどの難治性不随意運動症に対する治療として注目されています.脳深部刺激療法は,定位脳手術によって正確に標的とする神経核に植込まなければならず,この神経核の同定は,若い欧米人の脳を用いて作成された脳図譜を基に行われています.しかし,この脳図譜は,切断方向によっては全く別の個体が用いられ,内部構造の位置が大きく異なるため,脳図譜から直接整合性がある3次元脳情報を構築することが困難です.そのため,単純な拡大縮小を脳図譜に適用するだけでは日本人の脳に正確に応用することができない問題があります.

我々は,九大医学部や熊本大と共同で,日本初の試みである,形状・解剖・機能データを統合した 究極の日本人デジタル脳図譜(脳の解剖学的構造を示した地図)の構築と,それを用いた安全・正確な脳外科手術を支援するシステムに関して研究を行っています.

組織輪郭情報からの
3次元脳モデルの生成

脳標本をスライス状に解剖して得られた,組織輪郭情報を統合することで,3次元脳モデルが得られます.しかし,脳は軟性臓器であるため,脳を解剖した切断面には変形や欠損が生じます.変形を含んだ輪郭情報を単純に統合して3次元脳モデルを構築しても,正確な脳形状は復元できません.そこで,変形位置合わせ手法によって,切断面の変形を修正しつつ,輪郭情報を統合します.

組織輪郭情報の統合
参考文献

”3D Model Generation of Brain Block Using Internal Structure Contours for 3D Japanese Brain Atlas Construction”,Shou Sasaki,Ken'ichi Morooka,Kaoru Kobayashi,Tokuo Tsuji,Yasushi Miyagi,Takaichi Fukuda, Kazuhiro Samura, Ryo Kurazume, IEICE MI, pp.1-6, 2014.06

患者指向脳図譜の作成

患者の脳内部構造を可視化するツールとして,MRIやCTスキャンがありますが,全ての神経核を識別することは困難です.本研究は,脳図譜を患者の画像に写像し,患者脳内部構造を推定します.

脳モデルの目標曲面への写像
参考文献

”標準脳図譜変形による患者指向脳図譜の構築のためのランドマーク選択”,小林薫樹,諸岡健一,宮城靖,福田孝一,辻徳生,倉爪亮,生体医工学, Vol.51, No.6,pp.390-396, 2014