生化学・分子医化学講義2001912日(1)

 

A.有機化学の基礎

 

1.生体構成元素〔括弧内は全生物中でのatom%

H (49), C(25), O(25), N(0.27), Ca, K, Si, Mg, P, Na, S, Cu, Zn, Se, Mo, Cl, I, Mn, Fe, Co,

・タンパク質、核酸、糖質、脂質に必ず含まれる元素は?

 

2.化学結合

・共有結合 covalent bond

・イオン結合 ionic bond

・水素結合 hydrogen bond

・ファンデルワールス力

・疎水性相互作用 hydrophobic interaction

・配位結合 coordinate bond

 

3.官能基とその化学

・水酸基  -OH

SH  -SH

              ジスルフィドdisulfide

・カルボニル基  -CO-

・カルボキシル基  -COOH

・アミノ基  -NH2

・種々の結合(ペプチド結合、ホスホジエステル結合、グリコシド結合、エステル結合)

 

4.立体異性

・旋光性

・不斉炭素原子

・鏡像異性体enantiomer、ジアステレオマーdiastereomer

 

5.酸と塩基

・pH

・ヘンダーソン−ハッセルバルヒの式 Henderson-Hasselbalch equation

pKa

 

6.吸光度

・吸収スペクトル

Lambert-Beerの法則


生化学・分子医化学講義2001912日(2)

 

B.アミノ酸とペプチド

 

1.アミノ酸の化学構造

・アミノ基、カルボキシル基、側鎖、α炭素

・タンパク質構成アミノ酸はα−アミノ酸

 

2.タンパク質構成アミノ酸

              ・タンパク質は20種類のアミノ酸からなる。(天然のアミノ酸は300種以上)

              ・必須アミノ酸(不可欠アミノ酸)

 

3.L−アミノ酸とD−アミノ酸

・タンパク質構成アミノ酸はLアミノ酸

 

4.アミノ酸の解離状態はpHにより変化する。

              ・等電点pI

 

5.アミノ酸の化学反応

・ニンヒドリン反応

・アミノ基と反応する多数の試薬がある。

fluorescamin, o-phthalaldehyde, dinitrofluorobenzene, Edman 試薬等

              ・アミノ酸の検出、定量に利用される。

 

6.ペプチド結合

・アミド平面、回転の制限、シス型とトランス型

              Ramachandran plot

 

7.ペプチド

              dipeptide, tripeptide, tetrapeptide, oligopeptide, polypeptide

・アミノ酸残基、N末端、C末端

 

8.ペプチドのアミノ酸配列を決定できる。

              Edman分解

 

9.ペプチドを化学的に合成できる。

 

10.生体内のペプチドの例


生化学・分子医化学2001913日(1)

 

C.タンパク質protein

 

1.タンパク質は基本的にはポリペプチドである。

・分子量molecular weightは約5000100万程度まで種々。  *Dalton, Da

・多種類のタンパク質があり種々の機能を有する。

 

2.タンパク質は種々に分類される。

・球状タンパク質globular proteinと繊維状タンパク質fibrous protein

・単純タンパク質と複合タンパク質:ポリペプチド鎖以外の部分の有無による分類。

・単純タンパク質:溶解度により分類(歴史的)。アルブミンalbumin、グロブリンglobulin、グルテリン、プロラミン、ヒストンhistone、プロタミン、硬タンパク質等

・複合タンパク質:糖タンパク質、リポタンパク質、ヘムタンパク質、金属タンパク質、フラビンタンパク質、リンタンパク質、核タンパク質

・酸性タンパク質と塩基性タンパク質:等電点isoelectric point, pIによる。

 

3.タンパク質の構造の概略

・一次構造primary structure:アミノ酸の配列順序。(ジスルフィド結合の位置も含む。)

・高次構造higher order structure:二次、三次、四次構造の総称。立体構造を指す。

・二次構造:ポリペプチド鎖の主鎖の部分の規則的な立体構造。

・三次構造:1本のポリペプチド鎖全体の立体構造。

・四次構造:複数のポリペプチド鎖からなるタンパク質でのポリペプチド鎖の会合の仕方。

 

4.タンパク質の二次構造secondary structure

・ペプチド結合部分の間の水素結合により維持。

・α-へリックスα-helix

・β-構造β-structure(β-シートβ-sheet

β-strand、平行parallel、逆平行antiparallel

・α-へリックスとβ-構造のアミノ酸残基の種類の違い。

・β-ターンβ-turn (reverse turn, β-bend, tight turn)、Ω-ループΩ-loop

 

5.タンパク質の三次構造tertiary structure

・疎水性相互作用、水素結合、イオン結合、ジスルフィド結合により維持。

・水溶性の球状タンパク質では疎水性側鎖は内部、親水性側鎖は外部。

・超二次構造・モチーフ・フォールド、ドメインdomain

 

6.タンパク質の四次構造quaternary structure

・オリゴマーoligomerとサブユニットsubunit

・疎水性相互作用、水素結合、イオン結合等により維持。
生化学・分子医化学講義2001913日(2)

 

7.超二次構造supersecondary structure・モチーフmotif・フォールド

・複数の二次構造要素が組み合わさってできる構造のうちで頻繁にみられる典型的な構造。

・特定の機能と結びついている場合もある。

例:βαβモチーフ、βヘアピン、ααモチーフ、βバレル、α/βバレル、Greek key

                ロスマンフォールド、

*ジンクフィンガー(zinc finger)、ロイシンジッパー(leucine zipper)

             

8.タンパク質の変性denaturation

・ポリペプチド鎖がほどける(タンパク質の一次構造はそのままで高次構造が破壊される)こと。生理活性は?

・熱、極端な酸性・アルカリ性、界面活性剤、有機溶媒、重金属塩、変性剤。

・条件を選べば再生renaturationする。

 

9.タンパク質の高次構造(立体構造)は一次構造により決まると考えられている。

・遺伝子DNAの塩基配列→mRNAの塩基配列→タンパク質の一次構造→高次構造→作用

・タンパク質の作用の特異性、高次構造(立体構造)との関係

・タンパク質のフォールディングfolding、シャペロンchaperone(分子シャペロン)

 

10.ドメインdomain

・分子の機能上、構造上1つのまとまりをもつ領域

・三次構造内の独立して折りたたみ(フォールディング)が起こる単位。ファミリーを形成。

11.タンパク質の一次構造の決定

・@アミノ酸組成の決定、AN末端、C末端の決定、

Bジスルフィド結合の還元とSH基の誘導体化→各ポリペプチド鎖の限定分解→

生成したポリペプチド鎖のアミノ酸配列決定、C全配列の決定

・核酸の塩基配列から間接的に決定することもできる。

 

12.タンパク質の高次構造の決定

・X線結晶解析、核磁気共鳴(NMR)

 

13.球状タンパク質の例:ミオグロビンとヘモグロビン

 

14.繊維状タンパク質の例:コラーゲン

 

補足. タンパク質・アミノ酸の分離・分析法

・クロマトグラフィー、電気泳動、遠心分離


生化学・分子医化学講義2001918日(1)

C.タンパク質

13.球状タンパク質の例:ミオグロビンとヘモグロビン

13−1.ミオグロビンmyoglobin

・筋肉の酸素結合タンパク質、1個のヘムと1本のポリペプチド鎖(グロビン)とからなる。

・ヘムheme=ポルフィリンporphyrin+2価鉄Fe(II)

・リガンドligandO2, CO, NO, H2S

・双曲線の酸素結合曲線

酸素飽和度と酸素分圧(pO2)との関係:酸素結合(平衡、飽和、解離)曲線

 

13−2.ヘモグロビンhemoglobinPerutz

・オリゴマータンパク質、四量体tetramer。1hemesubunit

サブユニット組成:HbA α2β2HbF α2γ2

・デオキシヘモグロビンdeoxyhemoglobinの立体構造

  ヘモグロビンはαβ二量体dimer(αβプロトマーprotomer2個からなる。

・シグモイドsigmoid型(S字状)曲線の酸素結合曲線

肺でO2を受け取り、末梢でO2を離すのに好都合。

シグモイド型曲線はHill式(1910年)で記述できる。

              Hill式はヘモグロビン(Hb)は1段階でn分子のO2と結合すると仮定して導かれた。

ヒトヘモグロビンではn=2.83.0

  これらのことは、デオキシヘモグロビンの酸素親和性は低いが、1つの結合部位にO2が結合すると、他の結合部位のO2に対する親和性が増加することを意味する。

→ 各サブユニットのO2結合部位の間の協同的相互作用の存在

・酸素存在下でのデオキシヘモグロビンのオキシヘモグロビンへの構造変化

  @1つのサブユニットに酸素が結合する。

Aそのサブユニットのコンフォメーションが変化する。

Bそのコンフォメーション変化が、酸素がまだ結合していないサブユニットに作用し、それらのサブユニットのコンフォメーション変化と酸素親和性の増加が起こる。

C酸素親和性の増加により、すべてのサブユニットに酸素が結合する。

結果としてO2の結合にともないαβ二量体の位置関係が大きく変化する。

→ サブユニットの間で相互作用があることに一致する。

・H+はヘモグロビンの酸素親和性を低下させる。(ボーア効果Bohr effect

  デオキシヘモグロビンはオキシヘモグロビンよりも強い塩基である。

2,3-BPGはヘモグロビンの酸素親和性を低下させる。

2,3-ビスホスホグリセリン酸2,3-bisphosphoglycerate (2,3-BPG): 解糖系の代謝中間体

2,3-BPGはデオキシヘモグロビンと結合する。オキシヘモグロビンとは結合しにくい。

2,3-BPGHbFに対する結合は弱い。

CO2はヘモグロビンのN末端のアミノ基と結合し、カルバミン酸(carbamic acid)を形成。

  ヘモグロビンはCO2の運搬に貢献する。カルバミン酸はH+を放出する。


生化学・分子医化学講義2001918日(2)

 

13−3.アロステリック酵素allosteric enzymeとアロステリックタンパク質allosteric protein

・アロステリック効果:酵素の基質結合部位と“立体構造上異なる部位”allosteric siteに低分子のリガンドが結合して酵素の活性が変化する現象(Monod et al., 1963)。現在では、同様の現象を示す酵素以外のタンパク質にも用いる。

・アロステリック部位allosteric site

・アロステリックエフェクター(モジュレーター) allosteric effector (modulater)

・アロステリック酵素・タンパク質はオリゴマータンパク質であることが多い。

・ホモトロピックなアロステリック効果homotropic allosteric effect

正の協同性positive cooperativityと負の協同性negative cooperativity

S字形曲線

・ヘテロトロピックなアロステリック効果heterotropic allosteric effect

正のエフェクター→allosteric activation

負のエフェクター→allosteric inhibition

・アロステリック効果を説明する理論

  オリゴマータンパク質の各サブユニットにR stateT stateを仮定する。

    R state (relaxed state):基質(リガンド)に対する親和性大。

    T state (tense state):基質(リガンド)に対する親和性小。

  協奏モデルconcerted modelと逐次モデルsequential model

・ヘモグロビンはアロステリックタンパク質である。

  2,3-BPGは負のアロステリックエフェクターである。

 

13−4.鎌状赤血球貧血sickle cell anemia

・常染色体性の遺伝性貧血。米国黒人の10%、アフリカ黒人の25%が保因者(ヘテロ接合体)。

Molecular diseaseLinus Pauling et al.が仮説を提唱。タンパク質の特定のアミノ酸ただ1つの変化が遺伝病の原因となることが示された最初の例。

この病気の人のヘモグロビンHbSでは、β鎖の6番目のGluValに置換されている。

 

14.繊維状タンパク質の例:コラーゲン

・ヒドロキシプロリン(Hyp)残基、ヒドロキシリシン(Hyl)残基を含む。

  Posttranslational modification

  コラーゲン生合成にはビタミンC(アスコルビン酸)が必要。

・一次構造:(Gly-X-Y)n、    Pro, Hypが多い。多くの種類のポリペプチド鎖がある。

・各ポリペプチド鎖は左巻きらせん構造。これが3本よじれ合い右巻き三重らせん構造をとる

  →トロポコラーゲン

・トロポコラーゲンは、水素結合とLys残基間の共有結合で会合する。

 

(補足)・コンフォメーション(立体配座)conformationconfiguration

・質量分析法によるアミノ酸配列決定とプロテオーム解析

 

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