つぶやき

 

いつもよりも少し早く目が覚めた

窓の外には見慣れた街が寝静まっていたが

その上には見慣れぬ空が広がっていた

低い太陽に透かされた雲が

一面薄紫色のだんだら模様をひろげていた

空は微かに揺れていた

夜は明けていたが

昼は永遠に来ないように思われた

不思議な光景だった 

しかし 美しいと思った

だから心の中でそっと

静ちゃん きれいな朝だよ

とつぶやいてみた

すると遠く離れた海辺の小さな町で

彼女がささやく声が聞こえた

きしけん 二人の朝だよ

                             (20029)