心の窓拭き

ある日何を思ったか ふと窓を拭いてみた
突然世界が明るくなってびっくりした
煤けていた色彩が輝きだし
ものはすべて清潔な輪郭に包まれている
窓のすぐ傍で
新芽の赤ん坊たちを乗っけた枝が
もう春だよ 春だよって
歌いながら揺れていた
窓を開けると早春の青い空が部屋に流れ込んで来て
思わず深呼吸してしまった
澱んだ水槽から清流に放たれた
魚になったみたい
これまで一度も拭いたことがなく
寒くなってからはほとんど開けることもなくなっていた
ここに来て三年
新しい土地で仕事にも生活にも慣れたけど
最近感動すること少なくなった気がする
僕も心の窓拭きしなくっちゃ

                                                         (2005年3月)