>その3:ライフサイクル思考で見る有害・有価物質に環境影響評価(LCA)
🌍ライフサイクルアセスメント(LCA)とは
資源の採掘から廃棄まで、対象とする製品・サービスに係る物質・技術の連鎖を一貫して捉え、資源消費量や環境への排出物質を定量し、その環境への影響を評価する手法である。製品の「ゆりかごから墓場まで」(Gradle to grave)について評価, そして製品に関する[資源採取]から[製造]、[使用]、[廃棄]、[輸送] の全ての過程で、環境影響を定量的、客観的に評価する。 環境負荷の可視化により、企業・政策・消費者の意思決定に役立つ。持続可能な社会の実現に向けて、エコデザインやカーボンニュートラル戦略に活用されている。
🌍LCAの主な目的
環境負荷の見える化
環境に配慮した設計(エコデザイン)
持続可能な資源利用
環境政策・規制対応
🌍LCAのメリットと課題
✅ メリット
✔ 環境影響を科学的に評価できる ✔ 製品のエコデザインや持続可能な生産に貢献 ✔ 企業の環境戦略や政策決定の根拠になる
⚠ 課題
❌ データ収集が困難(サプライチェーン全体のデータが必要)
❌ 影響評価の手法が多様(どの環境指標を重視するかで結果が変わる)
❌ 製品や地域ごとの違いを考慮する必要がある
(記述に関する出典:一部ChatGPT4.0)
環境負荷低減のための意思決定ベースとなる事から本研究室では、LCA手法を用いて様々な研究に取り組んでいる。以下、研究事例を示す。
[1] 水俣条約の有効性評価に資する人為的活動下での水銀排出動態に関する研究

地球規模の水銀および水銀化合物によって引き起す健康、および環境被害を防ぐために水銀に関する水俣条約(以下、水俣条約)は日本国政府の主導で採択された。締約国において、条約の着実な履行のためには、様々な技術及び制度を複数組み合わせて対策を講じていくことが求められている。これらの対策の有効性を評価するには、現状(条約発効後)と過去(条約発効前)の水銀挙動の変化を考慮したものでなければならない。水俣条約では、締約国会議が条約の有効性評価を行う旨規定されており、条約の有効性評価のあり方についても、日本が主導的に議論をリードする科学的エビデンスを示すことが期待される。現在、どのように有効性評価を行うかについてはまだ定まっていないが、2023年までに条約の有効性評価をする必要がある。そのため、本研究では人為的活動下での挙動を定量的に把握し、ライフサイクルアセスメントの観点から人為的水銀排出による環境影響を評価し、水俣条約の履行を含む将来の水銀排出削減シナリオを定量的評価することによって条約の有効性評価に貢献することが望まれる(図出典:Habuer, Fujiwara T., Takaoka M., Journal of Cleaner Production 323, 129089 (2021))。
[2]脱炭素化に向けた廃棄物由来バイオガスのごみ収集への有効利用に関する研究

廃棄物系バイオマスをメタン発酵する施設の多くが、再生可能エネルギーとして生成バイオガスからの発電を行っているが、一方で廃棄物系バイオマスの収集を軽油トラックに頼っている。本研究では,廃棄物系バイオマスの収集過程も含めたメタン発酵システム全体のCO2排出量を、バイオガスを利用した天然ガス(CNG) トラックや生成電力を利用したEV トラックを用いる場合について計算した。その結果,CNG トラックとEV トラックの走行時のCO2排出量は,軽油トラックに比べてそれぞれ年間10.0,15.3 tCO2少なくなったが,バイオガス濃縮充填設備や車両用電池などの機器製造時のCO2排出量を含めると,総排出量では軽油トラックが最も少なくなった(右図, 出典:山下温大,宗村健太, 藤原健史, 哈布尓, 環境システム計測制御学会論文誌,第28卷 第2-3合併号 ,19-27 (2023))。