>その4:特定産業分野における人為的活動による環境・社会・経済影響に関する研究(LCSA)
🌱 ライフサイクルサステナビリティ分析(LCSA: Life Cycle Sustainability Assessment)
LCSAは、環境・経済・社会の3つの側面を統合して、製品やサービスの持続可能性を評価する手法である。 ライフサイクルアセスメント(LCA)を拡張した概念で、「環境」「経済」「社会」のバランスを考えながら、より持続可能な製品・サービスを設計・評価することを目的としている。企業のサステナビリティ戦略や政策決定に活用され、ESG投資やSDGs推進にも重要。環境負荷・コスト・社会的影響を総合的に分析し、バランスの取れた持続可能な選択を可能にする。
🌱LCSAの3つの柱

1️⃣ 環境LCA(E-LCA)
製品やサービスの環境影響を評価
2️⃣ ライフサイクルコスト分析(LCC)
製品・サービスの経済的影響を評価 製造コスト、運用コスト
3️⃣ 社会的LCA(S-LCA)
製品やサービスの社会的影響を評価
(記述に関する出典:一部ChatGPT4.0)
🌱LCSAの計算式
LCIA[環境]+LCC[経済]+Socia_LCA[社会]=LCSA[統合]
本研究室では、多次元評価に基づいてより一層の信頼性が高い統合化結果を求める。具体的には、ライフサイクルサスティナビリティアセスメント(LCSA)におけるライフサイクルインパクト評価(LCIA)、ライフサイクルコスティング(LCC)および社会的ライフサイクルアセスメント(Social-LCA)手法を用いて統合化を求める。つまり、環境・経済・社会の3つの評価を統合することで、持続可能性を総合的に分析する。以下、研究事例を示す。
[1] ライフサイクル思考で見る水銀およびGHG挙動に伴う環境・社会・経済影響に関する研究

水銀に関する水俣条約(以下、水俣条約)の履行により、水銀の採掘量や使用量の削減、水銀および水銀化合物(以下、水銀等)による環境汚染の防止等が期待される。しかし、アジア地域の経済活動を支える鉱石や石炭など水銀 を副産物とする鉱物資源の利用拡大に起因する人為的水銀排出量の増加が依然として懸念される。一方、地球温暖化への対策として、脱炭素化などカーボンニュートラルを目指す動きが世界的に加速している。水俣条約の着実な履行のためには、製品の脱水銀化や製造プロセスの転換、より高度な排出制御技術の適用など、様々な技術及び制度を複数組み合わせし、対策を講じていくことが求められている。これらの組み合わせにより水銀等および温室効果ガス(GHG)の削減co-benefit方策に期待される。そのため、本研究では天然資源の採掘・使用および副産物などの最終処分に起因する水銀等およびGHG排出量を同定し、水銀等およびGHG排出制御技術の導入・転換・組み合わせに伴う環境・社会・経済影響を明らかにする。最後に、科学的エビデンスに基づく水銀等およびGHG排出削減に関するco-benefit方策および戦略的な水銀管理方策を提示する(右図 Anthropogenic mercury inputs and outputs in China in 2019, 出典:Habuer, Fujiwara T., Takaoka M., Journal of Cleaner Production 323, 129089 (2021))。