発表概要

 

「『みること』による学習の認識段階 −情報伝達と共通感覚−」 −中学校美術科

佐々部直紀(津山市立津山東中学校)

 中学校美術科の評価の観点には「鑑賞の能力」がある.これは美術作品のみをその対象とし,材質や色彩,構成・構図を読み取る能力,またはその作品の時代背景や作者の心情などを読み取る能力であるかのように一般的には思われている.つまり,外部に既に存在する絵画的意味や社会的価値を与えられて,憶えていくような学習が鑑賞の学習と思われがちである.

 前述したことは間違いではないが,私は,既に社会的な価値が認められている美術作品などに限らず,自然物や事象,他者の保持している美意識を含め,自分の「美」とそれらのモノやコト,ヒトとの関わりにおいて認識を深めるべきだと考えた.私は,その力を「みる力」と称し,認識の段階論として「・見 る,・視る,・観る,・鑑る」で構成した.

 今回は「対象(モノ)」を「・観る」ことを中心として,その情報の所在や伝達するための媒介としての共通感覚・認識・イメージなどについて論じ,研究会参加者と共に討議し,理解を深めたい.

 

「エンタテインメント性を生かした授業デザインの原理と実際」― 中学校数学科

 

畑木紀男(高梁市立高梁中学校)

 昨今の国際的な学力調査の結果を見ると,数学嫌いの増加が懸念される状態であるといわれている.この現状を改善する一つの方略として,私の行った研究 では,一般に人々の心を掴んで離さない,広い意味での「エンタテインメント」に着目し,「エンタテインメント」を考察し,その手法を授業に取り入れることを考えた.つまり,「エンタテインメント」を構成する主要概念である「楽しさ」「遊び」に関する先行研究を分析し,「エンタテインメント」を構成する 要素に対する本質的な考察に基づいて,その要素の構成的関係を解明し,「エンタテインメント」性をもつ授業作りをどう行い,どう具体化していくのかについて研究を行った.昨年度の研究成果をもとに「エンタメ授業」の新たな発展性についても論じる.