研究の沿革・展望

大学進学以前から、異文化間の相互理解に関わる他者イメージ、特に西洋における日本・日本人像に関心を抱き、英国研究を進めるために英文学科に進学。英国における日本観研究のため、サンケイスカラシップ奨学制度により、1年間留学。 アジア・アフリカ・ヨーロッパの交流史を中心に、「文学と社会」という社会学講義において、文学の社会史的読解とテキスト分析法を学ぶ。また、英国における日本イメージに対する第二次世界大戦の深い関連を実感し、研究主題の萌芽となる。 帰国後、大学院進学にあたり、比較文化学科進学を考慮したが、日本研究を中心とする既存の学科より、西欧に触れる機会が多いことから、英文学を選択。20世紀研究には帝国主義・植民地主義の時代における時代概念の学習のためにヴィクトリア時代小説を研究対象として選択した。その後、インターディシプリン的分野と表象研究・文化研究が日本でも広がるにつれて研究会も増加し、各大学と交流しつつ他者表象についてテキスト分析を行ってきた。

1994年から1995年にかけて、かねてより関心のあった捕虜問題が英国において再燃し日本観との関係分析をめざし、「第二次大戦の経験を基にした、英国の日本イメージ」を研究の主題に据えた。予備調査の結果、聴き取りとフィクション双方の言説分析が不可欠であることがわかり、英国に二年滞在することを計画。理論の骨格のためにポストコロニアルシオリーを選択、かつ、精確な聴き取りを行うためにオーラルヒストリーの方法論の研鑚のため、両者を提供するエセックス大学進学。 ピーター・ヒューム、ジョナサン・ホワイト、キャサリン・ホールのもとでポストコロニアルスタディを学び、ポール・トムソンのもとでオーラル・ヒストリーを学ぶ。調査の結果は、現在博士論文などにまとめている。今後はより精緻な検証と、日本及び植民地の聴き取り調査による文化間の言説の突き合せを行いたい。 日本とイギリスの関係をケーススタディとして、戦争をも含めた異文化接触に際して起こる交流と摩擦を観察・検証・分析する。他者言説創生の型を判別することによって多様な文化の相互理解への足がかりを探り、グローバル化時代における多民族共生の方法の一助となることを目指している。



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