校友「蛤」について


近年、中国のSNS上で「膜蛤(モーハー)文化」がはやっている。「膜」は崇拝の意味で、「蛤」はカエル。膜蛤文化とは、黒い眼鏡を掛けカエルとよく似た江沢民(チアン・ツォーミン)元国家主席を崇拝する意味を含むまねや揶揄を指している。

2000年のこと。北京で香港メディアの記者の質問に対し大変怒った江沢民は、北京語、広東語、英語を使って身ぶり手ぶりも加えながら記者に「人生の道理」を説教した。その後、動画がネットに流出。国家指導者の厳粛ぶった「仮面」を見慣れた中国ネットユーザーは、初めてその真実の一面を見た。

「若者よ!君たちは too young, too simple!」「わしは年長者として君たちに人生経験を教えよう」「君たち!わしを批判してニュースを書こうとばかり思うな!君たちは naïve!」などと説教する言葉が中国のネットでシェアされ始め、みんな面白がってまねした。この件が「膜蛤」の起源だと言われている。

江沢民の「説教」から十数年がたち、シュウキンペイ時代に入って、シュウキンペイと風貌がよく似ているという理由で、「くまのプーさん」をメディアから封殺。言論の自由が厳しくなる一方だと感じる人々は、江沢民時代を何となく懐かしく感じている。

現在94歳の江沢民は1926年の中華民国時代に生まれた。民国時代に欧米的な教養を身に付け、名門・上海交通大学を卒業した知識人だ。これも民国文化が好きな若者や、台湾の民主化に憧れている知識層の好感度を上げた。こういった理由から今の中国のSNSでは「膜蛤文化」が盛んになり、江沢民の誕生日になると「膜蛤」ファンがネット上で誕生日のお祝いをしたり、パーティーを開くこともある。

「苟利国家生死以、岂因祸福避趋之」

「国に利することなら命を懸けて行い、自分の禍福を理由に避けたりしない」。89年のある事件後、江沢民が共産党総書記に選ばれたときの発言。

「+1s」

中国のネットスラング。江沢民の長寿を不可解に思ったネットユーザーの「自分の寿命を1秒削って江沢民の寿命を1秒伸ばす魔法がある」という冗談から広がった。

Source:Newsweek 日本版