経緯
インターネット等でトルコからのニュースなどの文字情報は入手しやすくなりましたが、文字化するのに2-3日のタイムラグがあるのが欠点です。音声による情報でもReal Audio等で流しているのは音楽関係に限られており英語、仏語、独語のように音声ニュースをインターネットで利用することはできないようです。トルコ語の音声情報を利用数にはどうすればよいでしょうか。それで思いつくのがラジオを利用して直接現地の放送を受信することです。まだインターネットがそれほど普及していない頃海外に住む日本人はラジオジャパンから日本の情報を得ることができました。そこで逆にトルコから離れたところに居るトルコ人は短波放送を利用しているかもしれないと考えました。しかし在日のトルコ人に聞いてみても、そんなことやったこともないし、周波数帯や時間帯も全くわからないと言います。彼らはインターネットを利用できる環境にあるし自分たちのネットワークがあるので特に必要を感じていないようです。
こういう状況の中でまず周波数帯を調べることから始めました。Yahoo等の検索によってTurkish やRadioのキーワードにかかってくる情報はほとんどがトルコの国内向けのFMラジオ放送に関する周波数やプログラムに関する物でした。短波放送を行っているであろうTRT(トルコ国営放送)は所在地しかインターネットによる検索では出てきませんでした。そのなかであるイラン人の個人のホームページにラジオ放送の周波数に関する情報を偶然見つけました。そのなかにTRTの短波帯の周波数に関する情報がありました。トルコ語放送であるかどうかはわかりません。英語放送であるかもしれません。しかし短波帯の放送が行われていることがわかっただけでもよかったと思いました。
短波放送受信愛好家(BCL)のためにWRTVH(World Radio TV Handbook)という全世界の放送局の周波数帯と時間に関する情報を集めた本があります。これは日本で買うと5千円程度(後述の日本BCL連盟や各地の洋書店より入手可)と高価なのと、最新版の入手に時間がかかりそうなのと周波数がわかっても実際に受信できる見込みがあるのかどうか全くわからなかったので、購入を躊躇していました。しかしこれに替わるものがソニーから発売されていることをソニーの短波放送に関するホームページから知ることができました。これの値段は1600円と大変安価でしかもWRTVHがなくとも短波放送に関する情報は十分網羅しています。これの長所は国別のリストと周波数別のリストが載っていることです。特定の放送局にねらいを定めて調べることもできますし、いまきこえている不明の言語の放送局でも周波数と時間帯からだいたいの予測をすることが可能です。これによるとトルコ語放送はありますが中東向けのものばかりで、極東向け放送がありません。これは極東アジアに移住するトルコ人が少ないことから予想がつくことです。しかしとにかく正確な時間帯と周波数がわかったのであとは電波状態を考えて受信することです。
短波放送は電離層という上空の大気層の影響を強く受けます。遠くまで電波が伝播する代わりに、恒常的に電波を受信することができません。いつの時間帯にある特定の放送局が受信できるかは、周波数帯や時間帯に左右されます。放送局のプログラムはこのような電離層の関係を考慮してその地域でもっとも感度よく聞こえる周波数帯と時間になるうように組まれます。しかし現実的には設備の問題や他の放送局の混信があったりしていつも理想的な受信ができるとは限りません。極東向けのトルコ語放送がないことは理想的な時間帯に放送時間が設定されていないことを意味します。とりあえず受信を試みることにしました。
トルコ国営放送を受信する
ソニーのウェーブハンドブックから得られた情報により周波数をあわせアンテナの向きをトルコに向けると混信はあるもののトルコ語の放送をかなりの受信強度で受信することができました。
この周波数では混信もなくフェージング(信号が強くなったり弱くなったり変動する現象)それほど気にならなく国内の局並に安定しています。冬には15Mhzの他の周波数や11Mhz帯でも聞こえていたのですが春以降はこの周波数でのみしか今のところ受信できていません。受信設備は以下のものを使用しています。
現有の設備では指向性のあるアンテナ(一方向のみの電波をより強く捉えることができるアンテナ)をモーターを使って回し、周波数も1Khz以下も読める通信型受信機を使っていますが、今の短波ラジオはかなり性能がよいので、本格的な設備をそろえなくても受信が可能です。
上記のアンテナにソニーのICF-SW1000Tというカセットテープ付きの短波ラジオをつないで試したところ十分受信可能でした。しかし室内アンテナでは無理でした。外部に出るアンテナを用意できれば受信は不可能ではないと考えられます。
結論から言いますとソニーのカセットテープ機能のない短波ラジオは3万円弱で入手できますからそれに電源コード等を利用した外部アンテナ(10メートル以上は必要と思います)の設備でも受信することが可能であることがわかりました。ちなみにICF-SW1000Tというカセットテープ付きの短波ラジオはタイマー録音機能があるので繰り返し聞きたいときや語学としての利用には大変便利です。
受信はまだ試みていませんが、トルクメン語やウズベク語の放送も受信できるようです。(CQ出版社CQ hamradio1997年8月号より。北京放送に関しては勝田茂氏からの情報提供による)
短波放送受信のための手引き
短波放送の受信により語学学習に活用することの他、音声資料が入手し難い言語の研究資料としての活用などいろいろな可能性があると思われます。短波放送の受信は従来は海外短波放送受信愛好家(Broadcasting Listener:BCL)という趣味の一つとして考えられてきましたが、インターネットが文字情報中心なのに対して、それを補うものとして短波放送を利用した情報の利用も音声面が重要な分野では、必要になると思われます。Real Audioがそれほど普及していない現状では短波放送という従来の手段も捨てがたいものがあります。BCLに関する一般的な知識に関してはアンテナや受信機に関する簡単な技術情報も含めて次の本が参考になります。
またインターネットの検索エンジンでもBCLやSWL(Short Wave Listener)をキーワードにすると様々なホームページに関する情報を入手することができます。リアルタイムな情報を入手する手段としてラジオ放送の役割がいかに大きいかということがよくわかると思います。またVOAやBBCをはじめとするメジャーな放送局は独自のホームページを持っており、世界中にいかに力を入れてサービスを行っているかがよくわかります。またBCLの愛好家のグループの運営するホームページではマイナー局の周波数情報が詳しくのっているようなところもあります。欧米ではBCLという分野が確立されていることが見てとれます。日本では全国的な組織である日本短波クラブや日本BCL連盟という組織があります。これらの組織では主要な海外放送局のプログラムや周波数に関する情報や日本における受信状態にレポート等を掲載した会誌を発行しています。
質問や情報提供等がありましたらお気軽にメールして下さい。
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