不定愁訴

中学生・高校生の不定愁訴  抄録 


中学・高校生における不定愁訴:第二次性徴との関連

 中学・高校生に対して,国民生活基礎調査と同じ不定愁訴や身体症状
41項目(男子は月経痛を除いた40項目)からなる質問紙調査を行い,男女それぞれ二次性徴との関連を検討した。

 岡山県内の公立中学校3年生159名と公立高校13年生834名の合計993名(男子446名,女子547名)を対象とし,無記名自記式質問紙調査を実施した。本調査に同意する者のみ質問紙に記入してもらい回収した。回収数は,合計920名(回収率92.6%)であり,女子が513名,男子が407名であった。
 
 約9割の学生が何らかの不定愁訴を持っており,女子の方が男子に比較して有意に高率であった。女子学生の方が,男子学生に比較して,全身症状の有訴率は有意に高く,特に,イライラ,頭痛,めまいは有意に高率であった。男子学生の方が,女子学生に比較して,有訴率の有意に高い項目は鼻づまりであった。

月経周期と不定愁訴の項目数との関連を見ると,月経が順調に来ていると考えられる半年間に月経が6回あった群では,訴えのある項目が少なく,これに比較して,半年間に4-5回の群,半年間に7回以上の群では有意に多い項目に訴えが見られた。

月経持続日数と不定愁訴の項目数,不定愁訴のある身体領域の数との関連では,月経が8日以上持続する群では,5-7日持続と正常な群に比較して有意に高値であった。

月経困難症との関連では,何らかの不定愁訴のある率,不定愁訴の項目数,不定愁訴のある身体領域の数ともに,月経困難症あり群は月経困難症なし群に比較して有意に高値であった。

月経前の体調不良との関連では,何らかの不定愁訴のある率は有意差が見られなかったが,不定愁訴の項目数,不定愁訴のある身体領域の数ともに,月経前に体調不良あり群は月経前に体調不良なし群に比較して有意に高値であった。

身長の伸びや二次性徴発現の有無から見ると,男子学生では,女子学生に比較して,その過渡期にあると考えられたが,変声やひげの有無で2群に分類して比較しても,不定愁訴・身体症状の有訴率に有意差は見られなかった。これに対して,女子学生では月経の影響は大きく,しかも,月経の詳細な状態を考慮しなければならないことが明らかになった。

性別と不定愁訴・身体症状

全体 (n=920)

女子 (n=513)

男子(n=407)

p値

全身症状

658 (71.5%)

383 (74.7 %)

275 (67.6 %)

<0.05

32 (3.5%)

14 (2.8 %)

18 (4.4%)

n. s.

だるさ

403 (43.9 %)

224 (43.7 %)

179 (44.1 %)

n. s.

不眠

129 (14.1 %)

62 (12.1 %)

67 (16.5%)

<0.07

イライラ

348 (37.8%)

227 (44.3%)

121(29.8%)

<0.01

物忘れ

393 (42.8%)

232 (45.2%)

161 (39.7%)

<0.1

頭痛

220 (23.9%)

139 (27.1%)

81 (20.0%)

<0.05

めまい

218 (23.7%)

150 (29.2%)

68 (16.7%)

<0.01

311 (33.8%)

180 (35.1%)

131 (32.2%)

n. s.

目のかすみ

196 (21.3%)

128 (25.0%)

68 (16.7%)

<0.01

見えにくい

222 (24.2%)

127 (24.8%)

95 (23.4%)

n. s.

224 (24.3%)

152 (29.6%)

72 (17.7%)

<0.01

耳鳴り

171 (18.6%)

122 (23.8%)

49 (12.1%)

<0.01

聞こえにくい

95 (10.4%)

62 (12.2%)

33 (8.1%)

<0.06

胸部

141 (15.3%)

90 (17.5%)

51 (12.5%)

<0.01

動悸

44 (4.8%)

29 (5.7%)

15 (3.7%)

n. s.

息切れ

63 (6.9%)

40 (7.8%)

23 (5.7%)

n. s.

胸痛

87 (9.5%)

58 (11.4%)

29 (7.1%)

<0.05

呼吸器

351 (38.2%)

179 (34.9%)

172 (42.3%)

<0.05

咳・痰

138 (15.0%)

76 (14.8%)

62 (15.3%)

n. s.

鼻づまり

293 (31.9%)

147 (28.7%)

146 (36.0%)

<0.05

ゼイゼイ

26 (2.9%)

16 (3.2%)

10 (2.5%)

n. s.

消化器

363 (39.5%)

234 (45.6%)

129 (31.7%)

<0.01

胃もたれ

76 (8.3%)

50 (9.7%)

26 (6.4%)

<0.08

下痢

89 (9.7%)

46 (9.0%)

43 (10.6%)

n. s.

便秘

130 (14.1%)

104 (20.3%)

26 (6.4%)

<0.01

食欲不振

130 (14.1%)

67 (13.1%)

62 (15.3%)

n. s.

腹痛

160 (17.4%)

112 (21.9%)

48 (11.8%)

<0.01

痔・出血

14 (1.5%)

6 (1.2%)

8 (2.0%)

n. s.

151 (16.4%)

90 (17.5%)

61 (15.0%)

n. s.

歯痛

71 (7.7%)

46 (9.0%)

25 (6.2%)

n. s.

歯茎のはれ

94 (10.2%)

54 (10.6%)

40 (9.9%)

n. s.

噛みにくい

20 (2.2%)

11 (2.2%)

9 (2.2%)

n. s.

皮膚

199 (21.6%)

124 (24.2%)

75 (18.4%)

<0.05

じんましん

83 (9.0%)

58 (11.3%)

25 (6.2%)

<0.01

かゆみ

170 (18.5%)

108 (21.1%)

62 (15.3%)

<0.05

筋・骨格

449 (48.8%)

272 (53.0%)

177 (43.5%)

<0.01

肩こり

352 (38.2%)

233 (45.3%)

119 (29.3%)

<0.01

腰痛

251 (27.3%)

137 (26.7%)

114 (28.1%)

n. s.

関節痛

81 (8.8%)

35 (6.8%)

46 (11.4%)

<0.05

関節の動き

34 (3.7%)

12 (2.4%)

22 (5.4%)

<0.05

手足

238 (25.9%)

155 (30.2%)

83 (20.4%)

<0.01

しびれ

49 (5.3%)

32 (6.2%)

17 (4.2%)

n. s.

冷え

130 (14.1%)

82 (16.0%)

48 (11.8%)

<0.08

足のむくみ

107 (11.6%)

82 (16.0%)

25 (6.2%)

<0.01

尿路・性器

331 (36.0%)

304 (59.3%)

27 (6.6%)

<0.01

排尿痛

12 (1.3%)

4 (0.8%)

8 (2.0%)

n. s.

頻尿

52 (5.7%)

30 (5.8%)

22 (5.4%)

n. s.

尿漏れ

11 (1.2%)

7 (1.4%)

4 (1.0%)

n. s.

月経痛

296 (女子の57.8%)

296 (57.8%)

n. a.

n. a.

損傷

110 (12.0%)

67 (13.1%)

43 (10.6%)

n. s.

骨折

32 (3.5%)

22 (4.3%)

10 (2.5%)

n. s.

けが

92 (10.0%)

57 (11.2%)

35 (8.6%)

n. s.

n. a.: データなし.; n. s.: 有意差なし.

(岡山大学大学院保健学研究科 中塚研究室 難波梓沙修士論文より)