GnRHアゴニスト(偽閉経療法)

GnRHアゴニスト(偽閉経療法)

子宮内膜症は、月経に伴う痛みや、過多月経などが主要な症状であることから、月経を止めることにより、このような症状を抑えることができます。閉経と同じ位のレベルに女性ホルモン(エストロゲン)を下げることにより月経が停止するとともに、子宮内膜症の病変は萎縮を始めます。

GnRHアゴニストは、視床下部ホルモンGnRH(Gonadotropin releasing hormone)の誘導体であり、性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)の分泌を抑制し、エストロゲン(女性ホルモン)の産生、分泌を抑制しようとする治療です。投与初期には、フレア・アップと呼ばれる、一過性にゴナドトロピンやエストロゲンの分泌が刺激され、放出される現象が見られます(この時期,まれに卵巣が大きく腫れることがあります)。反復投与により下垂体GnRH受容体のダウン・レギュレーションを起こし、ゴナドトロピン分泌能を低下させ、卵巣からのエストロゲンの分泌は抑制されます。

低エストロゲン状態が続くと、更年期の方と同様に、子宮内膜症の病巣は萎縮します。この間は、排卵がなくなり、月経もなくなることから、月経に伴う症状(月経痛など)はなくなり、貧血も改善します。

大きく分けて、4週間ごとに注射する製剤と、毎日、点鼻する製剤とがあります。日本で使用されている注射剤には、スプレキュアMP、リュープリン、ゾラデックスが、また、点鼻剤には、スプレキュア、ナサニールがあります。これらの薬剤は、副作用の起こり方、利便性、価格など少しずつ違いますので、主治医とよく相談して選択しましょう。

まず、妊娠していないことを確認し、必ず月経周期1~2日目より投与を開始します。また、稀に、排卵が完全に抑制できないで妊娠される場合もありますので、治療期間中は避妊をします。

副作用としては、わざと閉経後のホルモン状態にする治療法ですので、ほてり、頭重感、めまい、肩こり、外陰部そう痒感,、腟乾燥、腟炎、リビドー減退等などの更年期症状が見られる場合があります。また、うつ症状、脱毛、不正性器出血、乳房緊満、皮膚乾燥などもみられることもあります。

GnRHアゴニスト製剤を、長期に使用したり何回も繰り返して使用したりする場合は、更年期の方と同様に骨がもろくなる骨粗しょう症が問題になります。そのような場合は、DEXAなど、骨塩量を測定しながら、骨がもろくなってきていないか、注意して治療を続ける必要があります。治療に必要な以上にエストロゲンを低下させすぎないように、点鼻のGnRHアゴニスト製剤を、減量して使用したり、少量のエストロゲン製剤を内服してもらうadd back療法をおこなったりすることもありますし、骨粗しょう症の薬を内服しながら治療を行なうこともあります。