• 第7回 日本口腔検査学会総会・学術大会
  • The 7th Annual Meeting of The Japanese Society for Evidence and the Dental Professional

理事長挨拶

director.jpg 超高齢化社会を迎え, 歯周病源細菌が糖尿病、高血圧、心臓病、肥満、肝臓病などに深く関与することが明らかになった現在、患者の身体健康状況を考えずして歯科治療ができる状況ではなくなった。医師達も、全身に起こる基礎疾患を治すのに歯科医師の協力が必要になってきたことを認識し始めている。

 歯科では、多くの病態が細菌によるもので、病態は炎症であるにも関わらず、臨床検査など客観的診断なしに、齲蝕を削って詰め、欠損の補綴を行い、そして歯周治療を行ってきた。その結果、口の中がきれいであることが、歯科医療の到達目標であるかのような錯覚を起こした。歯科疾患の病態を考えると、齲蝕はエナメル質という上皮が、歯周病やインプラントは開放創という上皮の断裂が対象で、医科では考えられない状況下で機能化改善させなければならない特殊性を持つ。医科では、開放創は細菌の侵入門戸であり、生体内部の感染を制御するために抗菌薬を駆使し、閉鎖創が治癒の証なのである。しかし、歯科では、その病態が、細菌が体内に入る可能性を持つ開放創であることを忘れ、局所の細菌の除去にのみ奔走し、医療の本質を忘れかけているようにさえ思える。治療物のメインテナンスの歯科から、全身管理の歯科へ変貌を遂げる時である。

 もはや患者の状態、病気の状態を知ることができる臨床検査から、歯科医師が逃避することは許されない。キーワードは臨床検査による歯科治療のセーフティネットである。

 第7回の本大会は、岡山大学高柴正悟教授により「ライフステージに応じた口腔検査とその普及を目指して」をスローガンに岡山にて開催される。高柴教授は日本歯周病学会常任理事でもあり、口腔検査を基に歯周病治療を掲げておられる第一人者である。今大会を通じ、歯科における臨床検査と口腔検査の普及が現実的になることを期待したい。