子宮内膜症性では,気分の障害が高頻度に起こる!

子宮内膜症は,近年,増加傾向にあり,女性の6-10%,日本中で100万人以上が罹患していると推定されています.腹痛,腰痛,性交痛,排便痛等の疼痛,下腹部違和感,過多月経,貧血などが注目されますが,精神状態に関してはあまり知られていません.子宮内膜症は妊孕性を低下させるため,若年女性にとって不妊症の不安が精神的ストレスとなる可能性があります.

 子宮内膜症患者の調査では,月経時に「やる気がでない」,「人に攻撃的になる」,「いらいらする」,「むなしくなる」などの気分の障害が高頻度に見られ,月経以外の時期でも,「憂鬱になる」,「孤独を感じる」などが高頻度に見られます.また,既婚者に限ると,不妊症の不安のある患者は自尊感情(自尊感情とは,自分自身の能力や価値についてどのように感じるかということであり,自尊感情の低さは,自己拒否,自己不満足,自己軽蔑,自己に対する尊敬を欠くことを意味する)が低い傾向が見られます.このように,子宮内膜症の診療では,身体症状への対処のみではなく,気分の障害や不妊症の不安などを考慮した支援が必要です.

文献:江見弥生,中塚幹也,奥田博之:挙児希望のある子宮内膜症症例の自尊感情についての検討.母性衛生, 2005.

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