性同一性障害と二次性徴


性同一性障害(Gender identity disorder: GID)のうちfemale to male transsexual(FTM)の当事者は,身体の性は女性でも心の性(性自認:gender identity)は男性ですから,月経や乳房発育など二次性徴への激しい嫌悪感を持ちます.約1/4のFTMは月経を最も辛い経験としており,月経時には自殺したい,内臓を掻き出したいなどの衝動にかられる場合もあります.

 FTMの初経や乳房増大は12歳頃ですが,ほとんどの場合,すでに性別違和感を生じています.しかし,性同一性障害という言葉を知るのはもっと後ですので,この間,「自分が何者かわからない」といった精神的に不安定な時期が続きます.このため,不登校は約30%に,自殺念慮は約70%に,実際に自傷行為や自殺未遂を行ったものも約30%に見られます.学校保健の役割は大きく,もし,このような症例が医療施設へ紹介されれば,自傷,自殺,二次的精神疾患(対人恐怖症やうつ状態など)などを予防し学校生活も継続しやすくなる可能性があると考えます.


文献:中塚幹也.「男と女の倫理学:よく生きるための共生学入門」第1章.性同一性障害と性のグラデーション(篠原駿一郎,浅田淳一編,ナカニシヤ出版,京都,2005.)

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