子宮内膜症と不妊

子宮内膜症と不妊

子宮内膜症が不妊症の原因となることは知られています。

腹腔鏡検査、腹腔鏡下手術などでの腹腔内の観察を基にした種々の報告から、不妊症例では25-50%に子宮内膜症が見られたのに対して、避妊のため卵管結紮をした症例(すなわち,子供を何人も出産した不妊症ではない症例)では2-5%に子宮内膜症が見られています。また、子宮内膜症症例の30-40%が不妊である(一般婦人の2-3倍)との報告もあります。

卵管の癒着など機械的に妊娠しにくい状態であれば、当然、不妊症の原因となりますが、解剖学上は正常な状態でも、子宮内膜症があることが不妊の原因となる可能性が指摘されています。

卵胞期(低温期)が短縮すること、卵胞発育も抑制されること、排卵がうまく起こらないまま黄体期(高温期)になってしまう非破裂黄体化luteinized unruptured follicle (LUF)になりやすいこと、(子宮内膜症の35%が LUF、非子宮内膜症では11%が LUFとの報告もあります。)などがあげられています。

また、腹腔内の環境も変化しており、腹水量の増加、マクロファージ数の増加と活性化、卵子や精子、子宮内膜などに作用し、妊娠に影響するサイトカインIL-1, IL-2, IL-6, TNF-a, IFN)なども高値になっていることが知られています。

さらに、子宮内膜症症例では、血液中にも受精卵に有害な物質を含んでいたり、自己抗体を持っていたりすることも知られています。

体外受精(IVF-ET)でも、卵胞形成数が少ない、受精率が低い、着床率が低いなどの報告があります。

排卵は毎月起こりますが、その1ヶ月の間に妊娠する確率は、子宮内膜症があると12-36%低下するとされます。しかし、病変が大きくなく解剖学上に正常な状態(卵管が癒着や閉塞をしていない状態)を維持していれば、妊娠までの期間は長くなるが長期的に見れば正常女性と同様の妊娠率との報告もあります。

子宮内膜症があっても、妊娠する方はたくさんおられますので、必ずしもみんなが不妊症になるわけではありません。