肥満と不妊

肥満を伴う月経異常としては多嚢胞性卵巣症候群 (Polycystic ovary syndrome:PCOS)があります.PCOSは生殖年齢の女性の4~11%に見られるとされ,最も頻度の高い内分泌疾患の1つです.主症状は,排卵障害のため,自然排卵のない場合,妊娠のためには排卵誘発が必要となります.排卵しやすくなるように,腹腔鏡で見ながら,レーザー光線などで卵巣表面に穴を開ける方法もあります.また,排卵の問題のみではなく,子宮を養う動脈である子宮動脈の血管抵抗も高い場合も多く,子宮内膜の厚さや形態にも異常が見られるため,着床や妊娠維持にも不利であることも推測されています.

 PCOSでは,必発ではありませんが,肥満,にきび,多毛傾向が見られる場合もあります.検査値では,HDL-Cholesterol(善玉コレステロール)低下などの脂質代謝異常,インスリン抵抗性亢進(血糖を下げるインスリンの効果が低下しており,インスリンの分泌が亢進して補おうとしている状態,これが破綻すれば,糖尿病になる.)など,メタボリック症候群の状態を呈していることも多く,糖尿病や高血圧のハイリスク群です.


文献:Chekir C, Nakatsuka M, Kamada Y, Soichi Noguchi, Aiko Sasaki, Yuji Hiramatsu: Impaired uterine perfusion associated with metabolic disorders in women with polycystic ovary syndrome. Acta Obstet Gynecol Scand. 84(2):189-195, 2005.