最近の日本の摂食障害(拒食症・過食症)

拒食症による極端な食欲不振とやせ状態,過食症と自分で誘発する嘔吐,あるいは,過食による肥満など,種々のタイプの摂食障害が最近注目されています.17世紀後半には,すでに女性にみられる極端な食欲不振とやせ状態について報告されていましたが,さらに,近年は,以下のような種々の要因が食の問題を複雑にしているのではないかと思われます.

① やせ願望とダイエットブーム(肥満蔑視,肥満恐怖)

② 核家族化にともなう母親と娘の関係の変化(共生的人間関係)

③ 女性の高学歴化,社会進出と,それが,認められないジレンマ(ストレス蓄積とストレスの解消法の不足).

④ 食へ執着する情報文化と健康に執着する情報文化の交錯

⑤ 生活の中での食事の形態(個食の傾向),食物の(多くはジャンクフード)の購入法の変化

以前は,拒食症だけが注目されていましたが, 1970年代になって,日本では過食症も増加してきています.テレビが普及してきた1960年代に拒食症が,コンビニが増えてきた1975年ごろからは,過食症も増加したと言われています.

もちろん,同じ人が拒食期と過食期とを移行していることもあります.一般的には,拒食症の方が10歳代,過食症は20歳前後に多く,拒食症から過食症へ移行する傾向があるとされていますが,過食から発症するタイプは低年齢で発症するとの報告もあります.近年の日本の摂食障害の傾向として,拒食症から過食症への移行,拒食症の既往のない過食症,分類できない摂食障害などが増加してきているとされます.

女性の比率が約9割とされていましたが,最近では男性においても増加傾向にあると言われていますし,男性は,治療のため医療施設を訪れることが少ないことを考慮すると,男性が2割程度になるとも推測されています.

2004年11月3日