たった一回の内服でクラミジア治療

最近増えてきている性感染症 (sexually transmitted disease, STD)にクラミジア感染症があります.クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)という病原体により起こります.男性の場合の症状は,尿道炎による排尿時痛が多いようです.女性の場合は,子宮頚管炎のため帯下(おりもの)が増加し,子宮の中へ入り,卵管炎を起こし,将来的に不妊症や子宮外妊娠の原因となる可能性もあります.さらにお腹の中へ入って,骨盤腹膜炎を起こすため,下腹部痛を起こします.肝臓の周囲にまで広がって上腹部痛を起こすこともあります.

しかし,男女ともに無症状の人も多く,報告によれば,性器クラミジア感染症に感染していても,女性の約75%,男性の約50%の人が無症状とも言われています.このため,クラミジアに感染していても気づかず,病院も受診せず,治療されないまま,人から人へ蔓延することにもなります.

クラミジア感染症の内服治療と言えば,今までは2週間毎日薬を飲み続ける方法が一般的でしたが,1回(4錠)の内服だけで治療が終わる薬が,最近,日本でも保険適応となりました.今までの治療と同様の効果があり,一回の内服でクラミジアの消失率は90%以上という結果がでています.クラミジアは性交渉で感染することが多いため,治療はパートナーも同時に行うことが必要です.自覚症状がないため,途中で治療をやめてしまう人も多く,そのためにも飲み忘れることのない1回のみの内服で済む薬は有用になると考えられます.

副作用としては,消化器症状(下痢,腹痛など)が知られていますが,重篤な合併症は報告されていません.ただし同じ種類の薬でアレルギー反応のあった人や,他に薬を飲んでいる人(飲み合わせに注意しなければならないものもありますので)は必ず医師に報告するようにして下さい.

このようにクラミジア感染症の治療は簡便になってきていますが,感染しないように予防するに越したことはありません.また症状が進んだと,治療によってクラミジア自体は消失しても卵管機能が低下し,将来的に不妊症や子宮外妊娠となる可能性があります.不特定多数のパートナーとの性交渉は感染のリスクを増大させます.コンドームの使用は感染予防に有効ですが,気になる症状がありましたら早めに検査・治療を受けられることをお勧めします.

(2004年10月25日)