不育症症例における血管障害の研究

抗リン脂質抗体症候群は、凝固異常、血管障害により流死産の原因となる。

しかし、原因不明の不育症症例においても,血管障害にともなう子宮血流循環の悪化は,流産,胎児発育遅延,胎児死亡などに関与する可能性がある.

最近,血圧脈波検査が動脈硬化の診断に使用され,軽度の血管内皮障害から動脈硬化までの進展状況を評価可能となっている.進行した動脈硬化の指標であるAnkle Brachial Index (ABI)値は,不育症群,control群とも正常値であった.

しかし,動脈壁の硬さの指標である脈波伝播速度(PWV)や血管内皮機能障害の指標であるAugmentation Index (AI)は不育症群で有意に高値であった.

不育症群のうち抗リン脂質抗体の検出されない症例においてもPWV,AI値の高値の症例が見られ,抗体陽性の症例との間に有意差はなく,頚動脈脈波のTypeも血管内皮機能障害が比較的進行したIII型,IV型は,ともに高率であった.

不育症においては,抗リン脂質抗体症候群以外にも血管内皮障害を伴っている一群が存在し,抗凝固療法や血管保護療法が有効である可能性がある.また,生活習慣病のハイリスク群としても注意する必要がある.

 

Nakatsuka M, Habara T, Noguchi S, Konishi H, Kudo T. Impaired uterine arterial blood flow in pregnant women with recurrent pregnancy loss. J Ultrasound Med. 2003 Jan;22(1):27-31.

※日本産科婦人科学会にて報告、 「Good Presentation賞」受賞