岡山大学 工学部  環境・社会基盤系  環境マネジメント  コース

哈布尓(ハボル,工学博士)

環境にやさしい社会への実現を目指す

日本語
English
中文

メニュー

コンテンツへスキップ
  • ホーム
  • 略歴
  • 研究内容
  • 研究成果
  • 学生配属
  • 担当講義
  • 学術貢献活動
  • 社会貢献活動
  • 連絡先

研究内容一覧

> その1:環境社会学的視点から見た環境意識・行動パターンに関する研究

🌱 環境社会学(Environmental Sociology)とは?

環境社会学とは、人間社会と環境の関係を社会学的視点から研究する学問である。環境問題の発生メカニズムや、それに対する社会の対応、政策、価値観、行動などを分析する。環境社会学は、「なぜ環境問題が発生するのか?」「社会はどう対応すべきか?」という視点で環境と社会の関係を分析する学問である。環境問題は科学技術だけでは解決できず、社会の価値観や行動を理解し、適切な制度や対策を作ることが不可欠だ。

🌱主なアプローチ

✅ 構造的アプローチ
経済、政治、産業などの大きな社会システムが環境問題をどう引き起こしているかを分析
例:「資本主義経済の成長が環境破壊を加速させているのか?」
✅ 文化的アプローチ 環境に対する価値観や倫理、ライフスタイルの変化を研究
例:「なぜある国ではリサイクルが普及し、他の国ではそうでないのか?」
✅ 行動学的アプローチ 個人や集団の環境意識と行動の関係を調査
例:「エコな行動をする人としない人の違いは何か?」

🌱主な研究テーマ

1️⃣ 環境問題と社会の関係
環境汚染、気候変動、森林破壊、生物多様性の喪失などの原因と社会的背景
産業や経済システムの変化が環境に与える影響
環境問題が社会の異なる層(富裕層・貧困層など)に与える影響の違い(環境正義)
2️⃣ 環境意識と行動
環境問題に対する人々の意識の変化(例:「エコ」や「サステナビリティ」への関心)
個人のライフスタイルと環境負荷の関係(エコバッグ、マイボトル、フードロス削減など)
社会運動(気候変動対策を求めるデモ、環境保護団体の活動)
3️⃣ 環境政策とガバナンス
国や自治体の環境政策の形成とその影響(例:炭素税、プラスチック規制)
企業の環境対策とCSR(企業の社会的責任)
国際環境協定(パリ協定、SDGsなど)とその実施状況
4️⃣ 環境と社会的不平等(環境正義)
環境汚染や自然災害の影響を最も受けるのはどの社会層か?
発展途上国と先進国の環境負荷の違いと責任問題
「環境難民」としての移民問題(気候変動による居住地喪失)
(記述に関する出典:一部ChatGPT4.0)

本研究室では環境社会学的なアプローチ(インタビュー・アンケート調査など)を用いて、統計解析(Excel, SPSS)・モデル構築にて社会変容・行動変容・意思決定に結び付く科学的知見を政策決定者・経営者・消費者などに示する。以下、研究事例を示す。


[1] 企業の環境配慮行動の促進のための駆動力に関する研究

 環境問題の解決に向けた取り組みにおける企業の役割は今後、ますます重要性を増すと予想される。本研究では、中国の企業の環配慮行動の実態を把握し、さらに促進していくために効果的な駆動力を同定することを目的とした。中国の企業の特徴を把握するために、環境配慮行動の先駆者として日本の企業の環境配慮行動も研究対象とし、両国の結果を比較した。文献調査とアンケートを含むインタビュー調査で得られた情報が主な分析対象となる。対象企業は電気・電子機器業界である。インタビュー調査は、2010年4月―2010年6月、日本企業7社(専門家1名含む)、中国企業7社(専門家4名含む)に対して実施した。データの分析にはQDA(Qualitative Data Analysis)ソフトを用いて、日中電気・電子機器企業の環境配慮行動及びその駆動力を比較した。さらに、環境配慮行動の中でも特定の行動が、特定の駆動力の影響を受けていることを想定し、主成分分析とクラスター分析により、統計解析を行った。結果として、中国企業の環境配慮行動を規定する駆動力について、全体としては多くの企業は日本企業と同様に、「同業他社との競争」と「国内外の規制」に最も多くの影響を受けていることが分かった(右図, 出典:哈布尓, 亀山康子, 橋本征二, 森口祐一,第6回日本LCA学会研究発表会講演要旨集, 130-131 (2011))。


[2] カンボジア王国トンレサップ湖における水上集落住民のプラ廃棄物分別行動に関する研究

 ごみの収集サービスがなく、使い済みプラスチックが海洋プラごみになりやすい地域には、住民参画型のプラ廃棄物分別回収システムの構築が必要である。本研究ではカンボジア王国・トンレサップ湖水上集落中の複数の家庭にインタビュー調査(アンケート含む)を行い、プラスチック製品の知識や、環境汚染の認識、分別回収への協力意識を明らかにした。さらに、水上集落の家庭から捨てられるプラ廃棄物の種類や量をごみ組成分析調査によって明らかにした。結果として、プラスチックごみの推定量1軒あたり1日180.91gであり、水上集落住民1人あたり1日40.21gのプラスチックごみを排出することが分かった。これは、アメリカ、中国、カンボジアの平均(それぞれ1人あたり1日340g、120g、70g)と比べて非常に低いものの、インドの1人あたり1日10gよりは多い値である (図出典:Habuer, Takeshi Fujiwara, Spoann Vin, Phat Chandara, Makoto Tsukiji, Clean Technologies and Environmental Policy (2024))。

 


[3]使用済み携帯電話のリサイクル行動に関する消費者意識に関する研究

 使用済み携帯電話は貴重な資源を含む一方で、不適切な処理は環境汚染の原因となる。多くの国でリサイクルシステムが整備されているが、消費者の参加率は依然として低い状況にある。本研究では、中国の消費者を対象に、使用済み携帯電話のリサイクル意図に影響を与える要因を計画的行動理論(TPB)に基づいて分析した。621名の有効回答を最小二乗構造方程式モデリング(PLS-SEM)で分析した結果、態度、知覚行動制御、主観的規範といった理性的要因がリサイクル意図に正の影響を与える一方、プライバシーへの懸念や物への愛着といった感情的要因が負の影響を与えることが明らかになった。さらに、ファジーセット質的比較分析(fs-QCA)により、プライバシーへの懸念と物への愛着の両方が低い場合にリサイクル意図が高まることが強調された。これらの知見は、使用済み携帯電話のリサイクル促進策の立案に有用であり、今後はより効果的なリサイクルシステムの構築や消費者のリサイクル参加推進プログラムの開発に取り組んでいく予定である (図出典:Du Yuxin, Habuer, Fujiwara Takeshi, Process Safety and Environmental Protection 191, Part A, 218-233 (2024))。

↑Back

>その2:物質フロー分析(MFA)手法を用いた将来予測モデルの構築及びシナリオ評価

🌱マテリアルフロー分析(MFA: Material Flow Analysis)とは

物質や材料の流れを定量的に分析する手法。特定のシステム(国、都市、産業、製品ライフサイクルなど)内で、原材料の採取、生産、消費、廃棄までの流れを追跡し、資源管理や環境負荷を評価するために使われる。MFAは、資源の使用状況や環境負荷を可視化し、効率的な資源管理やサステナビリティ戦略の策定に役立つ分析手法である。

🌱MFAの目的

1.資源の効率的な利用
どの材料がどれだけ消費されているかを把握し、無駄を減らす
2.環境負荷の評価
廃棄物の発生量やリサイクルの割合を分析し、環境負荷を低減
3.持続可能な社会の構築
再生可能資源の利用促進や、資源循環の最適化に貢献
4.産業プロセスの最適化
製造業や建設業での資源投入・廃棄物の管理を改善

🌱MFAの基本構造

インプット(入力)
原材料(鉱物、化石燃料、水、バイオマスなど) エネルギー資源 化学物質
スループット(プロセス内の流れ)
製造プロセス(原材料が製品や中間素材に変換される) 消費プロセス(製品が使用される) リサイクルや再利用
アウトプット(出力)
製品(消費者に届くもの) 排出物(CO₂、廃棄物、廃水、有害物質など) リサイクルされる材料

🌱主な研究テーマ

✅ 都市や国家レベルの資源管理
例: 国全体の金属資源のフローを分析し、リサイクル戦略を策定
✅ 産業・製造プロセスの最適化
例: 自動車産業での鋼材やプラスチックの使用量を最適化
✅ サーキュラーエコノミー(循環型経済)
例: 使用済み製品の再利用・リサイクルの促進
✅ 環境影響評価(LCAとの組み合わせ)
例: 製品ライフサイクル全体でのCO₂排出量を評価
(記述に関する出典:一部ChatGPT4.0)

MFAは、他の環境・資源管理手法と組み合わせて使われることが多い。例えば ライフサイクルアセスメント(LCA)、エネルギーフロー分析(EFA)、産業エコロジー(IE)など。本研究室ではLCAと組み合わせて研究する場合が多い。以下、研究事例を示す。


[1] 中国における使用済み電気・電子製品の戦略的管理のための物質フロー分析

↑Back

>その3:ライフサイクル思考で見る有害・有価物質に環境影響評価(LCA)

🌍ライフサイクルアセスメント(LCA)とは

資源の採掘から廃棄まで、対象とする製品・サービスに係る物質・技術の連鎖を一貫して捉え、資源消費量や環境への排出物質を定量し、その環境への影響を評価する手法である。製品の「ゆりかごから墓場まで」(Gradle to grave)について評価, そして製品に関する[資源採取]から[製造]、[使用]、[廃棄]、[輸送] の全ての過程で、環境影響を定量的、客観的に評価する。 環境負荷の可視化により、企業・政策・消費者の意思決定に役立つ。持続可能な社会の実現に向けて、エコデザインやカーボンニュートラル戦略に活用されている。

🌍LCAの主な目的

環境負荷の見える化
環境に配慮した設計(エコデザイン)
持続可能な資源利用
環境政策・規制対応

🌍LCAのメリットと課題

✅ メリット
✔ 環境影響を科学的に評価できる ✔ 製品のエコデザインや持続可能な生産に貢献 ✔ 企業の環境戦略や政策決定の根拠になる
⚠ 課題
❌ データ収集が困難(サプライチェーン全体のデータが必要)
❌ 影響評価の手法が多様(どの環境指標を重視するかで結果が変わる)
❌ 製品や地域ごとの違いを考慮する必要がある
(記述に関する出典:一部ChatGPT4.0)

環境負荷低減のための意思決定ベースとなる事から本研究室では、LCA手法を用いて様々な研究に取り組んでいる。以下、研究事例を示す。


[1] 水俣条約の有効性評価に資する人為的活動下での水銀排出動態に関する研究

地球規模の水銀および水銀化合物によって引き起す健康、および環境被害を防ぐために水銀に関する水俣条約(以下、水俣条約)は日本国政府の主導で採択された。締約国において、条約の着実な履行のためには、様々な技術及び制度を複数組み合わせて対策を講じていくことが求められている。これらの対策の有効性を評価するには、現状(条約発効後)と過去(条約発効前)の水銀挙動の変化を考慮したものでなければならない。水俣条約では、締約国会議が条約の有効性評価を行う旨規定されており、条約の有効性評価のあり方についても、日本が主導的に議論をリードする科学的エビデンスを示すことが期待される。現在、どのように有効性評価を行うかについてはまだ定まっていないが、2023年までに条約の有効性評価をする必要がある。そのため、本研究では人為的活動下での挙動を定量的に把握し、ライフサイクルアセスメントの観点から人為的水銀排出による環境影響を評価し、水俣条約の履行を含む将来の水銀排出削減シナリオを定量的評価することによって条約の有効性評価に貢献することが望まれる(図出典:Habuer, Fujiwara T., Takaoka M., Journal of Cleaner Production 323, 129089 (2021))。

 

 

[2]脱炭素化に向けた廃棄物由来バイオガスのごみ収集への有効利用に関する研究

廃棄物系バイオマスをメタン発酵する施設の多くが、再生可能エネルギーとして生成バイオガスからの発電を行っているが、一方で廃棄物系バイオマスの収集を軽油トラックに頼っている。本研究では,廃棄物系バイオマスの収集過程も含めたメタン発酵システム全体のCO2排出量を、バイオガスを利用した天然ガス(CNG) トラックや生成電力を利用したEV トラックを用いる場合について計算した。その結果,CNG トラックとEV トラックの走行時のCO2排出量は,軽油トラックに比べてそれぞれ年間10.0,15.3 tCO2少なくなったが,バイオガス濃縮充填設備や車両用電池などの機器製造時のCO2排出量を含めると,総排出量では軽油トラックが最も少なくなった(右図, 出典:山下温大,宗村健太, 藤原健史, 哈布尓, 環境システム計測制御学会論文誌,第28卷 第2-3合併号 ,19-27 (2023))。

 

↑Back

>その4:特定産業分野における人為的活動による環境・社会・経済影響に関する研究(LCSA)

🌱 ライフサイクルサステナビリティ分析(LCSA: Life Cycle Sustainability Assessment)

LCSAは、環境・経済・社会の3つの側面を統合して、製品やサービスの持続可能性を評価する手法である。 ライフサイクルアセスメント(LCA)を拡張した概念で、「環境」「経済」「社会」のバランスを考えながら、より持続可能な製品・サービスを設計・評価することを目的としている。企業のサステナビリティ戦略や政策決定に活用され、ESG投資やSDGs推進にも重要。環境負荷・コスト・社会的影響を総合的に分析し、バランスの取れた持続可能な選択を可能にする。

🌱LCSAの3つの柱

1️⃣ 環境LCA(E-LCA)
製品やサービスの環境影響を評価
2️⃣ ライフサイクルコスト分析(LCC)
製品・サービスの経済的影響を評価 製造コスト、運用コスト
3️⃣ 社会的LCA(S-LCA)
製品やサービスの社会的影響を評価
(記述に関する出典:一部ChatGPT4.0)

🌱LCSAの計算式

LCIA[環境]+LCC[経済]+Socia_LCA[社会]=LCSA[統合]

本研究室では、多次元評価に基づいてより一層の信頼性が高い統合化結果を求める。具体的には、ライフサイクルサスティナビリティアセスメント(LCSA)におけるライフサイクルインパクト評価(LCIA)、ライフサイクルコスティング(LCC)および社会的ライフサイクルアセスメント(Social-LCA)手法を用いて統合化を求める。つまり、環境・経済・社会の3つの評価を統合することで、持続可能性を総合的に分析する。以下、研究事例を示す。


[1] ライフサイクル思考で見る水銀およびGHG挙動に伴う環境・社会・経済影響に関する研究

 水銀に関する水俣条約(以下、水俣条約)の履行により、水銀の採掘量や使用量の削減、水銀および水銀化合物(以下、水銀等)による環境汚染の防止等が期待される。しかし、アジア地域の経済活動を支える鉱石や石炭など水銀 を副産物とする鉱物資源の利用拡大に起因する人為的水銀排出量の増加が依然として懸念される。一方、地球温暖化への対策として、脱炭素化などカーボンニュートラルを目指す動きが世界的に加速している。水俣条約の着実な履行のためには、製品の脱水銀化や製造プロセスの転換、より高度な排出制御技術の適用など、様々な技術及び制度を複数組み合わせし、対策を講じていくことが求められている。これらの組み合わせにより水銀等および温室効果ガス(GHG)の削減co-benefit方策に期待される。そのため、本研究では天然資源の採掘・使用および副産物などの最終処分に起因する水銀等およびGHG排出量を同定し、水銀等およびGHG排出制御技術の導入・転換・組み合わせに伴う環境・社会・経済影響を明らかにする。最後に、科学的エビデンスに基づく水銀等およびGHG排出削減に関するco-benefit方策および戦略的な水銀管理方策を提示する(右図 Anthropogenic mercury inputs and outputs in China in 2019, 出典:Habuer, Fujiwara T., Takaoka M., Journal of Cleaner Production 323, 129089 (2021))。

↑Back
↑Back

メニュー

コンテンツへスキップ
  • プライバシーポリシー

Copyright © Habuer,2024. All rights reserved.