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 解説
Yoshino T., Walter M.J., Katsura T., Connectivity of molten Fe alloy in peridotite based on in situ electrical conductivity measurements: implications for core formation in terrestrial planets, Earth Planet. Sci. Lett., 222, 625--643, 2004. 戻る Full text

電気伝導度測定によるペリドタイト中の硫化鉄メルトの連結度:地球型惑星の核形成の解釈

  地球型惑星は太陽系誕生初期の早い段階で、金属核を形成したと考えられています。始源的な隕石の存在から惑星を作った材料はマントルを構成する岩石と核を構成する金属の混合体であると考えられており、現在の地球や火星、金星のような中心に金属核そのまわりに岩石からなるマントルという層構造を形成するためには、岩石と金属が物理的に分離する必要があります。分離過程は、岩石中を金属メルトが浸透流で移動するメカニズムと岩石が溶けた中を金属が沈降するメカニズムと2つの様式が考えられます。金属は岩石を構成する鉱物を余り濡らさないので、浸透流は金属核形成には重要ではないと考えられてきましたが、わたしたちは、浸透流が金属核形成に貢献しうるのかを高温高圧下での電気伝導度のその場測定によって金属の連結度を調査することにより検証を行いました。
 マントルを現在構成していると考えられているペリドタイトという岩石中に、金属核のアナログとして、硫化鉄を混ぜたものを出発物質として、どのくらいの量を入れると硫化鉄がペリドタイト中で連結できるのかを検証しました。その結果、ペリドタイトが溶けていない場合、硫化鉄の量が体積比で5%程度になると試料の電気伝導度が突然高くなることが分かりました。このことは、地球の金属核の占める割合が15%であることを考慮すると、5%の金属を岩石中に残して金属核の形成が浸透流で十分起こりうることを意味します。つまり、惑星は微惑星の衝突、合体によって成長するとき、すでに微惑星は金属核を持っていた可能性があります。
 一方、より高温でペリドタイトが部分的に融け始めると電気伝導度は突然下がり、金属の粒間を介した連結が切れることが分かりました。このことは、初期に惑星が暖まる段階の初期において浸透流で金属核は形成され、その後より高温で岩石部分が大量に融けて金属を支えることができなくなったとき、金属はメルト中を沈降するメカニズムにスイッチすることが予測されます。


昇温と減温サイクル時の電気伝導度と温度の関係(アレニウスプロット)。
ペリドタイトのソリダス以下1000度Cまで、6体積%以上の硫化鉄を含むサンプルは温度を下げても電気伝導度は一定である。硫化鉄の連結は6体積%以上の硫化鉄が存在するとき達成される



昇温と減温サイクル時の電気伝導度と温度の関係(アレニウスプロット)。
ペリドタイトのソリダス以上1250度Cまで、すべての硫化鉄を含むサンプルは温度を下げるとペリドタイト(0%)の電気伝導度と同等になる。珪酸塩メルトの存在は硫化鉄メルトの連結を妨げる。


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