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 解説
Katsura T., Yamada H., Nishikawa O., Song M., Kubo A., Shinmei T., Yokoshi S., Aizawa Y., Yoshino T., Walter M. J., Ito E., Funakoshi K., Olivine-wadsleyite transition in the system (Mg, Fe)2SiO4, J. Geophys. Res., 109, B02209, doi:10.1029/2003JB002438, 2004. 戻る Full text

(Mg,Fe)2SiO4のカンラン石−ワズレアイト転移と地震学的410km不連続

 地球のマントルには、深さ410km付近に地震波速度の急増域があり、410km不連続と呼ばれています。この410km不連続は通常、(Mg0.9Fe0.1)2SiO4組成のカンラン石のワズレアイトへの高圧相転移で説明されています。しかし、近年、地震学的観測の精度が上がり、様々な新しい観測結果が出てくるようになりました。そのような観測を本当にカンラン石−ワズレアイト転移で説明できるか検証する必要があります。
 このような観点のもと、(Mg,Fe)2SiO4系のカンラン石−ワズレアイト転移の相平衡関係を再検討しました。これまでの研究では、相平衡関係は急冷凍結法と呼ばれる手法で研究されてきました。しかし、この手法では高圧実験であるにもかかわらず圧力を正確に決定することが出来ません。私たちはX線その場回折の手法により、相平衡関係をこれまでより遥かに高い精度で決定しました。その相平衡図を下に示します。
 カンラン石−ワズレアイトの相転移圧力は、かなり大きな温度依存性を持ちます。従って、410km不連続の深さと相転移圧力を比較すれば、地球のマントルの温度が分かることになります。今回の研究から410km不連続上の温度は1390±45℃であることが分かりました。また、不連続面は100℃で10km深くなるので、410km不連続の深さ分布から、地球の温度の不均一を見積もることが出来ます。
 410km不連続の厚みは5km以下であるという観測があります。この観測を説明するために、カンラン石−変形スピネル転移の相転移の幅を見積もってみました。その結果、1390℃のカンラン岩中では、相転移の幅は8km以上である事が分かりました。従って、地震学的観測を説明するためには、マントルの化学組成モデルを少し変更する必要があることが分かりました。


今回の研究によって決定した(Mg,Fe)2SiO4系におけるカンラン石−ワズレアイト転移の相図

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