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 解説
Yoshino T., Takei Y. and Wark D.A. and Watson E. B.,, Grain boundary wetness of texturally equilibrated rocks with implications for seismic properties of the upper mantle, J. Geopgys. Res. B 110, B08205, doi:10.1029/2004JB003544, 2005. 戻る Full text
構造平衡岩石の粒界ウェットネス:上部マントルの地震波特性の解釈

 岩石中にメルトや水などの液相が存在するとき、弾性波速度、レオロジー、電気伝導度といった物理的性質は、液相の分布形態に強く支配されます。例えば、マントルを構成するペリドタイトが部分溶融するとき、液相は地震波速度が遅いのに対し、固相は速度が速いので、部分溶融ペリドタイトはその中間の値をとりますが、固相の表面がどの程度、液相に濡らされているかによって、その速度は大きく影響されます。地球深部で想定されるような高温状態では、液相の分布は、固液界面のエネルギーが最小となるような安定な分布(構造平衡)を示すようになるので、高温高圧条件で安定な液相分布の形態を定量化することは、部分溶融ペリドタイトの地震波速度からメルト量や分布形態を推定するのに極めて有効な手段です。しかしながら、今までの研究ではメルトが3次元的に粒界にどのように分布するかは議論の余地を多く残していました。アメリカのWatson等のグループは、メルトは粒界の稜に沿って3次元的なネットワークを作っていると考えているのに対し、オーストラリアのFaul等のグループはメルトは粒界に沿ってフィルム状に分布していると考えています。

 本研究では、高温高圧下で合成した固液複合系の液相分布を画像解析によって、固相表面が液相にどの程度濡らされているかを、液相分率の関数として粒界ウェットネスという無次元量で定量化を行いました。その結果、メルトは粒界の稜に沿って分布していることが明らかになりました(図参照)。実験的に決定された分布形態を用いることにより、上部マントルの部分溶融ペリドタイトのメルト量の推定、分布形態が構造平衡であるか否かを推定することが可能になりました。


図:液相分率と粒界ウェットネスのlog-logプロット。傾きは1/2であることは液相の形態がチューブ状であることを示す。



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