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拡散クリープでは、固体物質は拡散に律速されて変形します。つまり物質を構成している原子ひとつひとつが変形場における応力によって拡散し、巨視的に物質が変形していきます。従って、拡散速度が変形速度に密接に関係します。実際には、元素の拡散ではなく、空孔と呼ばれる結晶中に存在している欠陥の拡散が重要であると言われています。この空孔の移動に伴って元素が拡散していきます。巨視的にみたとき、拡散が起きているときの物質の流量は注目元素の濃度勾配に比例します。これは、拡散におけるフィックの法則とよばれております。ここで、濃度勾配は、濃度差と距離の関数であることはあったりまえですので、流量は注目している物質の大きさ(粒径)に反比例することになります。塑性変形を考えるときには、弾性変形とことなり、歪み速度を考察します。歪み速度は、その物質がどれくらいの速度でどれくらいの量変形するかを表しています。従って。先ほどの流量を用いると、流量は単位時間あたりの物質移動量なので、注目物質の大きさを考慮に入れることによって歪み速度を考えることが出来ます。すなわち、流量を粒径で割ると歪み速度になります。拡散係数の定義は、流量と濃度勾配の比ですので、最終的には、歪み速度は拡散係数に比例し、母体の大きさの2乗に反比例することが導かれます。そして、濃度勾配を生み出した応力に比例します。応力を歪み速度で割った値が粘性率なので、拡散クリープにおいては、粘性率は拡散係数と粒径の関数になり、応力には依存しないことが理解できます。例えば、下部マントルを例にとりますと、地球物理学的観測から求められている粘性率が1021Pas程度です。拡散係数が10-18m2/s程度なので、下部マントルの粒径は1-10mm程度であると推定することができます。 |
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