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多相系のレオロジー 山崎 大輔
 地球内部は単一の相ではなく、複数の相から構成されています。例えば、上部マントルでは主要にはオリビン、パイロキシンがあり、下部マントルは珪酸塩ペロブスカイトとフェロペリクレースです。従って、鉱物単体ではなく、地球のレオロジーを考察する場合には、多相系のレオロジーを知る必要があります。ここでは、簡単のため、2相系を考えます。

 弾性と同様に塑性でも、応力と歪みの集中度合いが重要です。複合物質が変形した場合に、応力が均質になるのかあるいは変形量が均質になるのかという問題です。前者の場合は、2相のうち柔らかい相は高歪み速度となり、かたい相は低歪み速度を被ります。一方、後者の場合では、やわらかい相は低応力下にあり、かたい相は高応力下にあることになります。従って、それぞれの相への応力・歪み速度の分配を知ることによって、それぞれがどのような変形機構・構成則に従って流動していくかを知ることが出来るのです。実際には、どちらか片方のみが均質になるということはなく、ある分配係数をもつようですが、理論的にも実験的にもはっきるとは解明されておりません。

 もうひとつ重要な問題は、2相系では、両者が織りなす組織が全体としての塑性に影響を与えることです。例えば、かたい相とやわらかい相があるときに、かたい相が連結しているのか、あるいは、やわらかい相が連結しているのか、さらにまた、両者の体積分率はどれくらいかということです。かたい組織が連結している場合(load bearing framework model)は、全岩としてかたい相のレオロジーが支配的になり、やわらかい相が連結している場合(interconnected weak layer model)には、全岩としてやわらい相のレオロジーが重要となります。これらの連結度は、変形の度合いや量比によって変化します。例えば、2相系物質が変形していく場合には、全岩として粘性率を下げるために、自己組織再編を起こし、やわらかい相が連結していくという考えがあります。つまり、粘性率が歪み依存性を持ちます。上部マントルではオリビンとパイロキシンが主要鉱物で、オリビンの量はパイロキシンの2倍ほどあると考えられています。また、オリビンは一般的にパイロキシンよりもやわらかい鉱物です。従って、この場合には、全体のレオロジーはオリビンによって支配されていると考えることは受け入れやすいを思われます。しかし、下部マントルでは様相がことなります。珪酸塩ペロブスカイトはフェロペリクレースの3倍程の量があります。しかし、粘性率はフェロペリクレースの方が数桁低いと言われています。従って、2相が均質に分布した組織と変形によって形成される組織とではレオロジーを支配する相がことなります。その結果、歪みの増加(例えば、沈み込むスラブ内・周辺での時間増加)によって様々な現象が変化していくと予想できます。

 多相系のレオロジーは、その重要性に比較してまだ十分に研究されておらず、まだまだ分からないことが多く残っています。



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