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 解説
Aizawa Y., Yoneda A., P-V-T equation of state of MgSiO3 perovskite and MgO periclase: Implication for lower mantle composition, Phys. Earth Planet. Inter., 155, 87-95, 2006. 戻る Full text
MgSiO3 perovskiteとMgO periclaseの状態方程式による下部マントル組成の考察

 下部マントル構成鉱物の物性に関する実験データはまだまだ乏しく、MgSiO3 perovskiteに関しても室温常圧下での体積弾性率K0ですらまだコンセンサスが得られていません。研究によって240GPaから260GPaまで、20GPaもの食い違いがあります。我々がMgSiO3 perovskite焼結体を共振法で測定した結果は約240GPaです。
本研究は最近の弾性実験データをもとに、MgSiO3 perovskiteとMgO periclaseの状態方程式を熱力学的に再検討したものです。その方法の概略ですが、これまでに報告されたstatic compressionによるP-V-TデータをMie-Grüneisen-DebyeモデルとBirch-Murnagahnの状態方程式にフィッティングすることによりGrüneisen parameterとその体積依存性qを求めます(専門用語を多用しますが御寛恕ください)。その際に常温でのMgSiO3 perovskiteの圧縮曲線は、室温常圧下における体積弾性率K0を240,250,261GPaとして計算します。MgOについても同様の計算を行い、pyrolite modelを仮定した場合のPREMとの比較を行います。比熱については、Debye modelと(optical modeを考慮した)Kieffer modelで評価を行い、比熱の効果についても検討しました。
 その結果ですがMgSiO3 perovskiteのK0について240-250 GPa(最近の実験データ)を採用すると、pyrolite組成から得られる体積弾性率やseismic parameterはPREMと食い違っています(Fig. 1)。Kieffer modelを用いてもその結論は同様です(Fig. 2)。MgSiO3 perovskiteの体積弾性率が260GPaだとpyrolite model でPREMとよく合います。従って、最近の低目のK0が正しいならば、なんらかの異常が下部マントルで起きていることになります。Fig. 1aを見ると体積弾性率がマントル下部でPREMより大きく見積もられているので、(体積弾性率の小さな)MgOの割合が深さとともにに増えていくか、断熱温度より大きい温度勾配のどちらかが予想されます(温度が上がると一般に体積弾性率は減少する)。どちらを仮定してもモデル内部ではコンシステントなので、どちらがより妥当かは他の測定データなどとの比較が必要になります。
状態方程式の立場から下部マントルの組成と温度の問題を検討するためには体積弾性率の温度圧力同時微係数などの精密測定データを常温常圧及び高温高圧下で測定していくことが今後とも必要です。そのために我々は、ペロブスカイトの純良大型単結晶による精密測定を行うために高周波共振法を開発しました。近いうちに高周波共振法でMgSiO3 perovskiteの常温常圧の体積弾性率決定版を出すように努力中です。


Fig.1. Effect of K0 on K, density and seismic parameter


Fig.2. Effect of heat capacity model on K, density and seismic parameter

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