消えた轍 片上鉄道廃線跡を行く

 

1. 廃線跡自転車道への関心

2. 迂回路を通って起点まで

3.  一両編成の鈍行列車で聖地巡礼

4. 峠清水トンネルを抜けて金剛川橋梁を渡る

5. 往時の車窓風景を眺めがら天瀬駅到着

6. 数々の遺構を堪能す

7. これぞ聖地巡礼の醍醐味か?

8. 吉ヶ原にて

 

 

3. 一両編成の鈍行列車で聖地巡礼
 

  自転車道を少し行くと、道の傍らに勾配票を発見!

 事前の調べで主な遺構のおよその場所は確認していたが、正確な場所はよく分からないものも多い。そのため見つけるとお宝を探し当てたようでうれしい。最近「聖地巡礼」といって、若い人の間でドラマやアニメの舞台となった場所を巡ることが流行っていると聞く。自分には理解できない全く無縁な話だと思っていたが、今の気分はまさに「聖地巡礼」である。
 ところで勾配票に記された数字は28.6。激坂ヒルクライムで有名な寒霞渓でも勾配は18%なので、自転車乗りにとっては目を疑う数字である。しかし、勾配票の隣に建てられた看板に記されているように、単位はパーミル(1/1000)なので2.86%、緩斜面である。ただし、少なくとも当時の列車にとっては結構な坂であったようだ。

 勾配票の近くの切り株の上に往時の列車の写真があった。

 一気に電車気分が盛り上がる。ところで、電車と自転車は一見全く関係ないように思えるが、走行中に複数の自転車が車間を詰め一列縦隊になることを列車(トレイン)を組むという。 空気抵抗が減るため単独走行と比べてずっと楽に早く走れるからだ。マラソンでも風よけで人の後につくことがある。しかし、自転車はスピードがずっと早 いので、空気抵抗も格段に大きくなる。そのため、風よけの効果も格段に大きい。私は都合がつくときは、BPSなかやまの日曜朝練に参加させてもらっている。平地では列車を組んで走 り、貧脚の私でも巡航速度は30キロ代半ば。特急列車とまではいかなくても快速列車くらいにはなった気分である。車間距離を詰めてスムーズに先頭交替をしながら走るのはそれなりに注意を要するので、ゆったり景色を楽しんでいる余裕はない。それでも独特の緊張感をもって普段よりも早い速度域でひた走る集団走行は、単独走では味わえない充実感と楽しさがある。
 しかし、本日の私は、一両編成の鈍行列車。勾配票を後にし、のんびりぶらぶら「聖地巡礼」の旅を続けよう。