岡山大学 顎口腔再建外科学

  • トップページ
  • サイトマップ

専門分野のご紹介

顎変形症(受け口、下顎前突、上顎前突、開口症)

顎変形症とは

顎変形症とは上あご(上顎骨)または下あご(下顎骨)あるいはその両方の大きさや形、位置などの異常によって、咬みあわせの異常をきたしている状態をいいます。多くの場合,顔面の変形を伴います.具体的には,下の歯が上の歯の前方へ出ている下顎前突症(俗にいう“うけぐち”)や,下の歯がひっこんでいる下顎後退症あるいは上顎前突症,かみ合わせの面が傾き,顔が非対称になる顔面非対称,などが含まれます.原因についてははっきりしたことはわかっていません.

治療方法

外科的矯正治療とよばれ,歯の矯正治療と手術(顎矯正手術,骨切り術などといいます)を組み合わせて行います.
歯の矯正治療は矯正歯科で行い,外科手術は当科(口腔外科(再建系))で行います.治療方針の決定は両科でカンファレンスを行ったうえで決定します.

代表的な手術方法

下顎枝矢状分割術:下顎枝といわれる下顎の骨の部分を外側と内側の2枚に分割し,ずらした状態で骨片を固定します.最も適応範囲が広く,術後成績も安定しています.当科での平均手術時間は2時間40分,平均出血量は157mlです.

下顎枝矢状分割術による下顎前突症の治療

  • 術前

  • 術後
下顎枝矢状分割術による下顎後退症の治療

  • 術前

  • 術後

下顎枝垂直骨切り術:下顎枝といわれる下顎の骨の部分を垂直方向に分割し,ずらしますが,骨片の固定は行わず,上下の歯をしばって(顎間固定といいます)術後約1週間口が開かないようにして,咬み合わせを固定した状態で骨の治癒を待ちます.適応範囲はやや狭く,顎間固定による気道閉塞のリスクがありますが,顎関節症状の改善にも効果があります.当科での平均手術時間は1時間51分,平均出血量は90mlです.

上顎LeFort I型骨切り術:上顎の骨を鼻孔の部分で骨切りし,ずらした状態で骨片を固定します.上顎に対する手術では最もよく用いられます.下顎骨に対する手術と同時に行われることが多く,当科での平均手術時間は上下顎合わせて4時間21分,平均出血量は442mlです.

上下顎骨切り術による顔面非対称の治療

  • 術前

  • 術後

オトガイ形成術:オトガイ部(下顎の顎先)の骨を分割し,前後あるいは左右にずらした状態で骨片を固定します.補助的に行う手術で,より自然な顔貌を得るために行います.当科での平均手術時間は約40分,出血量は少量です.

当科での治療の特徴

外科的矯正治療の患者様は全身的には健康で,若い方が多くを占めます.QOL(生活の質)をよりよくするためにこの治療をうけられるのですから,当科では安全性確実性に重点をおいて治療方法を決定しています.

例えば,術後の顎間固定についてですが,可能性は低いながら気道閉塞による窒息の恐れがあります.当科では下顎に対する手術では下顎枝矢状分割術を優先して採用し,骨片間を強固に固定することで術後の顎間固定を行わないようにしています.顎間固定を行わなくとも,当科独自の顎関節位置決めシステムにより,術後成績は極めて安定しています(第52回日本口腔外科学会で報告).

さらに,治療成績の向上をめざして,3次元画像解析睡眠時呼吸解析などを行い診断に役立てています.