山頂手前の駐車場で自転車を降りた。ここからは歩きだ。クリートカバーをつけ、山頂まで桜並木の階段を登っていく。ほどなく山頂の展望台に着いた。お楽しみの眺めはいかに?
咲き誇る桜の向こうに海と島が見える。まさに、三千本桜の呼称にふさわしい眺めである。
両手を高らかに上げた桜の下を船がくぐってゆく。東京物語?何だかひと昔前の小津映画のようだ。
山頂でおにぎりをほおばりながら良い景色を眺めているとすっかりご機嫌さんである。先ほど上り道ですれ違った自転車乗り達と同様、私も嬉しそうな顔をしていたに違いない。山頂から見ると、山のあちこちで桜が咲いていることがわかる。近くの花見客が、島の人が何十年もかけて植樹してきたのだと教えてくれた。
だんだん日が陰ってきた。それまで大気中を飛び交い乱反射していた無数の光の粒が消え去ると、風景はすっかりしっとりとなった。