もう後は帰るだけが、まだまだ足の方は走り足りない。そこで白滝山に上ることにした。白滝山への上りは短いものの勾配が13〜15%くらいの区間が多く、上りごたえがありなかなかよろしい。おかげで少し冷えかけた体が温まった。程なく見晴らしの良い駐車場に着いた。折角なので、自転車を降り、五百羅漢の石仏が並ぶ山頂まで登る。
訪れるのは2度目だが、ここにも桜が咲くとは初めて知った。
境内には無数の石仏が鎮座している。
若い外国人旅行者の二人組が去ると、静まり返った境内に、私だけが一人ぽつんとたたずんでいた。午前中あんなに青かった空は光沢のない白い雲にすっかり覆われてしまった。石仏は何も語らず、桜は自らの物思いに沈んでいる。何となく私もしんみりとした気持ちになった。私の魂は、石仏と重なり桜の夢想に溶け込みながら、遠くけぶる海と島々を呆けたように眺めていた。どれくらいそうしていただろうか。やがて下から人の声がしたと思ったら、年配の団体旅行客がぞろぞろ上ってきた。それを機に私は山を下りることにした。
最後にかわいらしいお地蔵さんに別れを告げた。
朝早かったせいだろう。帰りの電車の中ではかなり寝てしまった。そのため、岡山駅に降り立った時には、何だかちょっぴり今日一日のことが夢のような気さえした。しかし、たとえ夢でも良い夢には間違いない。また見てみたいものである。