生方 史数 (うぶかた ふみかず) UBUKATA Fumikazu
研究者としての詳細は、下記のリンクあるいは当サイトの「主な業績(生方)」をご覧ください。

東南アジアの農山村地域には豊かな自然が広がっています。そこに住み自然と共に生きる人々も、貧しいながらもなんだか幸せそうです。桃源郷とはこのようなところを指すのかもしれません。しかし、近代化の過程では、そのような地域は「遅れて」いて開発が必要な地域として、また「豊かな」環境を保全するべき地域として扱われるようになり、住民は良くも悪くもその影響を大きく受けることになっていきます。
わたしは、近代化が急速に進む東南アジアの農山村を歩きながら、このような地域の人々が望む発展とは何か、環境保全や外部から来る開発とどう折り合いをつけるべきかを考えてきました。思うに、いわゆる「持続可能な開発」を達成するためには、それが地域社会の論理に根ざした多様な形態と経路をもつ必要があるのではないでしょうか。そのような立場から、わたしたちの社会が持つグローバルな広がりとローカルな奥深さをどう調和させていくべきなのか、経済学や政治学をベースとした学際的な方法で研究しています。
また、最近では、これに加えて「文理融合研究」を研究する活動を始めています。環境問題や災害に対処するには、自然科学だけでなく、人文・社会科学の知見をも動員していかなければなりません。しかし、このような異なる専門分野の知見の融合・総合は、実際にはかなり難しいのが現状です。そこで、異分野の研究者が交流する際にどんな障壁が存在するのか、そうした障壁がどう乗りこえられうるのか、といった課題を研究しています。
所属・連絡先
岡山大学学術研究院 環境生命科学学域 教授
Email: ubukat-f@okayama-u.ac.jp(@を半角にしてください)
専門分野
東南アジア地域研究、国際開発学、環境問題の政治経済学、ポリティカル・エコロジー
経歴
京都大学大学院農学研究科卒。JICA派遣専門家、日本学術振興会特別研究員(PD)、京都大学東南アジア研究所特定助教、岡山大学大学院環境学研究科准教授、同環境生命科学研究科准教授、同教授などを経て、2021年度より現職。
カセサート大学、コンケン大学、ラオス国立大学、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス等で在外研究を行い、タイ、ラオスを中心に現地調査を行ってきた。最近ではベトナム、インドネシアやマレーシアなどにも足を伸ばしている。
使用言語
日本語、英語、タイ語、およびラオス語
担当講義(2018年度)
大学院(日英2言語併用講義、あるいは英語での講義)
「国際開発と環境問題」、「国際開発と環境問題特論」、「特別研究」、「環境経済学演習」、「環境マネジメント特論(分担:英語での講義)」
学部
「環境問題の人文社会科学」、「地域経済学」、「環境と地理(分担)」、「環境管理工学演習(環境経営学系)」、「分野演習」、「環境管理工学概論Ⅰ・Ⅱ(ガイダンス科目)」、「卒論研究」
教養教育
「途上国開発と環境」、「環境と地域社会を考える(分担)」
集中講義など
岡山大学・フエ大学院特別コース「地域開発と資源管理(英語での講義)」
北海道大学・PAREプログラム 基礎論Ⅳ「持続可能な発展に向けた経済・政策の転換(英語での講義)」
高大連携事業等
兵庫県立柏原高校「「文系」の視点からみた環境問題」
岡山学芸館高校SGH グローバル課題研究Ⅰ「環境と貧困ー東南アジア農山村の現場からみえてくることー」
学生へのメッセージ(講義に関して)
グローバル社会に生きるわたしたち。一見遠い国の話でも、我々の生活に密接に関わっていることがたくさんあります。講義では、わたしの海外調査などを紹介しながら、それらをできるだけ身近に感じてもらえるよう努力したいと思います。
また、大学院の講義や分属後の3年生以上が参加するゼミでは、英語・日本語の2言語で議論できるよう工夫しています。
わたしたちと一緒に、具体的な例からイメージしながら、地球の将来、地域の未来を考えていきませんか?
主な研究テーマ
1)東南アジアにおける資源開発の政治・経済と地域社会への影響
近年経済成長が著しい熱帯アジア諸国では,石油,鉱山,森林,河川やラグーンなど,豊かな天然資源が次々と開発されてきた。一方で,資源が存在する地域に住む住民の生活は,必ずしも開発の速度に見合った向上を示しているとはいえない。また,急激な開発により,自然環境や住民の生存基盤が破壊されているという批判も国内外で急速に高まっている。そこで、東南アジアの資源産業、特にパーム油産業と紙パルプ産業を事例に、政府・企業・住民・NGO・国際機関などが開発のプロセスでみせたせめぎあいと,結果として構築された諸制度や社会ガバナンスの様態を考察する研究を行っている。
2)自然資本の構築プロセスと自然や社会へのインパクト
東南アジアにおける環境保全の資金調達手法・制度に関する議論とその実体化の過程を技術・制度政策・実態から分析することで、自然が「資本化」し「金融商品化」する経緯と政治的メカニズムを検証し、社会や自然へのガバナンスの変化を考察する研究を行っている。
3) 環境、災害、科学技術と政治プロセス
気候変動や災害への適応や対策が、東南アジアのローカルな現場でどのように進行しているかを、知識と技術の政治という視点から明らかにする研究を行っている。
4) 学際研究(特に文理融合研究)のメタ研究
環境問題や災害に対処するためには、自然科学だけでなく、人文・社会科学の知見をも動員していかなければならない。このため、文理融合をうたった様々な共同研究プロジェクトが実施されているが、それらがどのような「融合」を成し遂げたのかはほとんど検証されていない。そこで、特定の文理融合型学際共同研究プログラムを具体例に、異分野の研究者が交流する過程を詳細に追うことで、学際共同研究が抱える課題や、知の融合・総合を成し遂げるために必要な要件を考察する研究を行っている。