体験記

環境経済学・食料環境政策学研究室に所属する学生、あるいは卒業生が経験した国際インターンシップや海外留学の体験記を紹介いたします。

国際インターン

吉田 遥那(2019年3月卒)

国際短期ワークキャンプ Ky Quang Pagoda
・派遣元:国際NGO NICE
・派遣先:NGO VPV(volunteers for peace vietnam)
・期間:2018年11月5日~11月17日
・活動内容:ベトナムの孤児院で、障がい児の食事のサポートや2才くらいの子どもたちの世話をしました。

 2週間のワークキャンプで大きく感じたことは、日本で普通の生活ができている自分は恵まれているということです。学生時代、放課後学童保育でバイトしていたこともあり、子どものお世話という面では得意で、期待に胸を膨らませ、NPOの寮に行きました。しかし、思っていたより衛生面で設備が整っておらず、寝室にはネズミやゴキブリ、トカゲなどが出ることは毎日でした。これはベトナムの家では当たり前のことでした。はじめ3日くらいはその現実を受け入れることができなく、日本で当たり前に、きれいな家に住めることが、なんて素晴らしいことなのか、改めて実感しました。

 また、孤児院では重度の障がい児の子が90名ほどいました。単に赤ちゃんの時に捨てられた子もいれば、障がいの症状が重く、家では育てることができないということで、捨てられてしまった子たちもいま した。寝たきりの子、暴れてしょうがないから檻に入れられてる子、ベトナム戦争時の枯葉剤の影響で頭だけ異様に大きく成長してしまっている子など症状は様々でした。施設内は掃除が行き届いていましたが、子どもたちにつける器具や寝かせられているベッドが旧式なこともあり、始めは少し恐怖の念がありました。障がい児がベトナムに多く存在するのは、枯葉剤の影響がまだ残っているからという理由もありました。平和の大切さ、自分が五体あり、健康で生活できている幸せさを感じました。

 この2週間のワークキャンプのおかげで、自分の価値観を広げることができました。学生の間でしか、自由に時間を使うことができません。みなさんもやりたいことがあるなら、ぜひ学生のうちにやっておいたら、良い経験になると思いますよ!

 

海外留学

渡邉 大樹(2016年4月~17年3月にベトナム留学、その後2019年4月~21年3月まで再度ベトナム留学)

 私は,修士課程に在籍時,ベトナム国家大学ホーチミン市人文社会科学大学に客員研究員として2016年4月から1年間留学しました。
 留学の目的は,修論研究に取り組むうえで必要となるデータの収集を現地の農村で行うことにありました。私の研究内容は,ベトナム南部のマングローブ林地域における資源管理ガバナンスの変遷についてです。調査地域では,現在エビ養殖が盛んに行われています。みなさんの食卓に馴染みのあるブラックタイガーは,ここからも出荷されていますよ。私の研究では具体的に,かつてマングローブ林のみに覆われていた湿地帯においてどのように開拓が進んできたのか,その一方で国際的に森林伐採が問題視されるようになるにつれてどのように保全が進んできたのかを,開発に関わってきた現地の各主体の関係性に着目しながら,その歴史を紐解くことを通して、現地社会の特徴を検討しました。

写真① エビ養殖池の様子 *池にマングローブを保全しながらエビを養殖しています。

写真② 出荷されるブラックタイガー

 上記の留学目的に加えて,私は開発経済学を学んでいた学部生の頃から途上国における貧困や環境問題に関心があり,純粋に開発の現場に赴いて自分の目で見てみたいという想いから留学しようという考えに至りました。
 いざ,純粋な気持ちと共に留学を始めたものの,いろいろなことがゼロからのスタートであったので,ベトナムでの研究生活に慣れるまでには,それなりに時間がかかりました。たとえば,日常生活に関して言えば,最初の1ヶ月間は,風邪や腹痛といった体調不良に悩まされました。亜熱帯モンスーン気候に属すベトナムの気候に適用することが先決でした。それ以降は,“ベトナムで生きるための身体”が出来上がったのか,なぜか体調を崩すことは少なくなりました(笑)。


 一方で,農村フィールドワークの実践においては,私自身がその経験をあまり有していなかったので,第一に,地方政府から調査許可を取得するために必要な手続きについて知るといった調査準備の段階から勉強しました。私の調査地域は湿地帯であるため,ジャングルみたいなところです。現地の人々の移動手段は主にボートです。小中学校の学生が,ボートで登校している姿がとても印象的でした。スーパーマーケットやコンビニも無いので,食品や日用品をボートに乗せた仲買人が,川沿いに建てられた各家の前に販売しに来ます。私も現地で各農家さんの家へインタビュー訪問する際に,ボートを手配することもありました。しかし,レンタル費用がけっこう掛かるので,ボートの利用は極力控え,炎天下の中,草を掻き分けながら道なき道を歩いて農家さんの家を回りました。やっとの思いで到着したなか,農家さんが提供して下さった冷たいお茶には,なんともいえない感動を覚えました(笑)。わりと英語には自信があったつもりでいましたが,インタビュー時には,通訳者として帯同してもらった学生と噛み合わないことも多々ありました。
 このように不器用ながらも,1年間の研究留学を無事に終えることができました。また,未熟ながらも,最終的には修論の作成に加えて,国際学会やワークショップでの発表にも取り組むこともできました。


 農村でのフィールドワークは本当に面白かったです。とくに,エビ農家さんは,本当にフレンドリーな方々で,必ずといってよいほど,インタビュー後には酒の席に招いて頂きました。おかげで,農村に滞在している間に,かなり太ってしまいましたが(笑)。現地では宿が無いので,エビ農家さんの家にホームステイすることもありました。マングローブの木で建てられた彼らの家屋は,とても開放的で居心地がよかったです。当たり前ですが,いわゆるジャングルみたいなところに滞在していたので,街灯等は一切無く,夜になると辺りは暗くなります。月が街灯代わりとなり,「こんなにも月って明るいものなんだ」と初めて気づきました。

写真③ 飲み会の席の様子 

 留学中は,研究活動に加えて,人文大で開講されるベトナム語学習者向けの授業も受講しました。私は,それまでベトナム語を勉強した経験が全く無かったので,正直なところ,途中で断念したくなるほど語学学習には苦戦しました。しかし,当時6ヶ月間のコースワークで勉強したことは,現在Ph.Dとしてベトナムで留学生活を再度送るうえでとても役立っています。


 以上,雑感となりましたが,本当に留学に行ってよかったなと私は思っています。たった1年ではありましたが,学ぶことは多く,そして,自分に足りないものを知る良い機会となりました。とくに,とにかくやってみるという行動に移す力を,少しは養えたかなと自負しています。不慣れながらも,行動に移す過程において直面した課題と向き合い,乗り越えていくことで自己成長できるのだなと強く実感した留学となりました。今後もこの姿勢を大事にしたいです。


 幸いにも,私は,官民協働による奨学金であるトビタテ!留学JAPANの4期生として留学させて頂きましたが,トビタテ奨学生の仲間は皆「留学に行ってよかった!」と口を揃えています。海外に興味がある方は,ぜひ学生のうちに留学に行ってみてください。日本から飛び出すことで初めて気づくことや,留学を通して得られる経験から学ぶことは,たくさんあると思います。私は,留学を終えて得た知識や経験を,社会の貢献に活かしたいと思い始めている自分に気づきました。
 拙い文章ではありますが,最後まで読んで下さり,ありがとうございました。

写真④ カマウ省にて

その他

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