塩とともに生きる人々
タイ東北部で塩づくりをする村に行ってきました。
この地域は長年塩害に悩まされていて農業の生産性も低いのですが、一方で、塩は人々にとってなくてはならない資源でもあります。この地域では、パーデーク(これは方言です。タイ標準語ではプラーラーと呼ばれます)と呼ばれる魚の塩漬けが郷土食となっていて、これをつくる際に地域でつくられた塩を使うほうが、海水由来の塩を使うよりもずっとおいしいそうです。自然が「恵み」になるのか「害」になるのかは、人々や社会がそれを生活の中でどうとらえるかによるところも大きいのですね。
この村の人々は、塩だまりという環境を賢く利用して塩をつくり、生活の糧にしてきました。しかし、塩は単なる「生活の糧」以上の文化的な存在であるようです。彼らが塩にまつわる様々な言い伝えを残していて、それを後の世代に伝えていることがわかりましたし、最近はする人が少なくなっているこの塩づくり自体を後世に残したいとも考えているようです。
環境保全には人々の協力が不可欠です。そのために、環境を守る行動が経済的にペイするような技術や制度を普及することが重要だといわれています。もちろんそれはその通りなのですが、価格等が変わってしまってペイできなくなれば、その行動がなされなくなってしまうという問題も抱えています。もし人々に環境保全活動に協力してもらいたいのであれば、究極的には、今回訪問した村のように、その活動が自分たちの文化(もちろん文化も変わっていきますが)と結びつくことが重要なのではないでしょうか。
そんなことを考えながら、家路につきました。